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【主張】年金制度 不安を煽るのは国民の不利益に
老後の生活資金が夫婦で2000万円不足するとした金融庁審議会の報告書が、波紋を広げている。
言うまでもないが、老後の生活設計は年金などの収入や持っている資産に応じ、それぞれが決めることだ。誰もが2000万円を自前で準備しなければならないような表現は不適切である。
さらに許されないのは、この問題に便乗し、年金制度は破綻が近いかのように吹聴する一部野党である。公的年金への信頼を損ねるような言動は国民の不利益につながる。
まず強調したいのは、公的年金制度の安定性は、揺らぐどころか一段と強化されているという点だ。年金給付の財源の一つである年金積立金の運用益は、この6年間で44兆円のプラスとなっている。景気回復に伴う賃上げによって保険料収入も増え、年金財政は安定感を一層増している。
公的年金の利点も忘れてはならない。
基礎年金の半分は、国から税金が投入されている。厚生年金は本人が払う保険料と同額を事業主が納めている。これを個人で積み立てるには、国や事業主の負担分を自分で工面しなければならない。マスコミが「国が運営する公的年金のメリットや信頼性は、個人で老後に備える場合をはるかに上回る」(19日付 毎日)と指摘する通りだ。
保険料を納めなければ、後になって損をするのは本人である。若い人ほど影響は大きい。政党や政治家が、事実に基づくことなく、いたずらに不安を煽ることは無責任というほかない。
そもそも19日の党首討論で、年金制度の抜本改革案を提示した党首はいなかった。共産党を除き与党を経験しており、公的年金の制度設計がしっかりしていることを知っているからではないか。
もちろん、低年金や無年金に対する手だては重要だ。
この点、保険料を納めた期間に応じて最大で月5000円を上乗せする「年金生活者支援給付金」が12月から支給される。また2017年には、年金を受け取るのに必要な加入期間(資格期間)が25年から10年に短縮され、今年3月までに約59万人が年金を受け取れるようになった。いずれも公明党の実績である。