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診療、介護、障がい3報酬改定
医療・福祉 賃上げ後押し
政府目標 24年度にベア2.5%引き上げ
伊佐進一党厚労部会長に聞く
22日に政府が決定した2024年度予算案を巡って、18年度以来6年ぶりとなる診療、介護、障害福祉サービス等の3報酬を同時に見直す「トリプル改定」は、医療・福祉現場で働く人の賃上げを後押しする内容となった。現場の声を受けて強力に推進した公明党の取り組みについて、伊佐進一厚生労働部会長(衆院議員)に聞いた。
――3報酬改定のポイントは。
医療・福祉分野を巡っては、看護補助者や理学療法士、臨床検査技師といった「コメディカル」と呼ばれる医療従事者や介護職員の賃金は、全産業平均を下回る水準で推移しているのが現状です。しかも、政府が定める公定価格で運営される同分野は物価高の影響を価格に転嫁できないため、現場から賃上げを求める切実な声が公明党に寄せられていました。
3報酬改定では、基本給を底上げするベースアップ(ベア)として24年度に2.5%、25年度に2%の処遇改善につなげるための措置が盛り込まれます。
全産業平均との差を埋めようとする対応であり、24年の春闘が始まる前に率先して賃上げ率を示す形になりました。
公明、衆参予算委や首相への提言などで一貫してリード
(右から)伊佐、山本(香)の両氏も参加した、岸田首相(中央)への党提言申し入れ=11月30日 首相官邸
――賃上げに向けた公明党の取り組みは。
公明党は現場の声を踏まえて、私が11月21日の衆院予算委員会、山本香苗参院議員が同28日の参院予算委員会で、賃上げを確実に実施するよう論陣を張りました。さらに、同30日には、岸田文雄首相に提言を申し入れるなど、一貫してリードしてきました。
今回の改定で終わりではなく、今後も医療・福祉分野の賃上げにつながる政策を推進します。
――薬の公定価格である「薬価」については。
海外で承認された薬が日本で使えるまでに時間がかかる「ドラッグ・ラグ」が問題になっています。日本の創薬力を強化するためにも、医薬品の技術革新(イノベーション)をより評価する仕組みが設けられます。
――負担のあり方も焦点になりました。
介護保険サービスの利用料に関して政府は、2割負担の対象者の範囲を拡大する案を検討していましたが、見送りとなりました。持続可能な全世代型社会保障の構築に向け、給付と負担のあり方の議論は重要であるとの考えの下、公明党が今回は物価高などを考慮するよう求めた結果です。
食材費などの高騰を受けた入院時の食費見直しを巡っては、公明党の強い主張を受け、一律に基準額を引き上げるのではなく、低所得の患者に対しては所得区分に応じて引き上げ幅を抑えることとなりました。
3報酬改定の概要
診療報酬では、医師や看護師らの人件費に当たる「本体」部分を0.88%引き上げる。特に、コメディカルなどについては、24年度にベア2.5%、25年度にベア2%引き上げを実施するための特例を設ける。また、40歳未満の医師や薬局の薬剤師、事務職員らの処遇改善も図る。薬価は1%引き下げ、診療報酬全体ではマイナスとなった。
介護報酬は1.59%、障害福祉サービス等報酬は1.12%、それぞれ引き上げる。賃上げに向けた措置は2年間とし、26年度の対応は予算編成過程で検討する。厚労省は介護、障がい福祉分野の職員の処遇改善に関する加算の一本化などによる賃上げ効果も見込んでいる。
3報酬改定による処遇改善は、24年6月に施行する。