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2019年6月15日

コラム「北斗七星」

ハマキチという名の男の子が母親と田植えの手伝いをした帰り道、地蔵の近くで大勢の亡者が、空へと昇る光景を見た。旧暦で翌日は端午の節句。一年で最も、潮が引く大潮の日だった◆古老たちが「数十年ぶりの引き潮」と驚嘆する中、浜辺は海藻を採る村人で大にぎわい。そこに突然、山のような高い波が押し寄せ、多くの人馬をのみ込む。ハマキチ親子は、高台へ駆け上がり、難を逃れた。母親は「前日に見たことは津波の前兆」と確信したという。宮城県気仙沼市の大島に伝わる『みちびき地蔵』の物語は民話として現在に息づいている◆この物語は、明治三陸地震津波がモデルとされる。123年前のきょう、発生した巨大津波は北海道から宮城の太平洋岸を襲い、2万2000人の命を奪った◆<春彼岸 津波寄せ来し浜に立つ 我が曽祖父も波に消えたり>。気仙沼市立松岩小学校の教諭だった畠山登美子さんの短歌である。畠山さんの祖父は明治三陸地震津波で父を失い、村人と杉ノ下地区の高台へ集団移転した。だが、東日本大震災で畠山さんは、両親と大津波の犠牲となった。歌は、震災前に詠まれたものだったが、2011年4月10日付朝日新聞「朝日歌壇」に入選し、掲載された◆歴史を見詰め、災害の教訓を心に刻もう。失われた命に報いるために。(川)

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