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【主張】深刻な医薬品不足 供給力強化へ構造改革を急げ
医薬品不足が2年以上も解消しない。国民の命と健康を守る医薬品が足りないのは深刻な事態だ。供給力強化に向けた業界の構造改革を急ぐべきである。
厚生労働省による10月の調査では、回答があった医薬品1万6781品目のうち、24%(3970品目)が限定出荷や供給停止の状況で、その7割超は後発(ジェネリック)薬だった。
特に今年は、新型コロナや例年より早い季節性インフルエンザの流行などで、せき止め薬やたんを切る薬が不足し、厚労省が製薬メーカーに増産を要請する事態となっている。
このため今国会で審議中の2023年度補正予算案では、医薬品の増産に当たるメーカーを支援する「医薬品安定供給体制緊急整備補助金」が盛り込まれた。増産に必要な人件費と設備整備費を補助し、製造体制を強化する内容である。当面の供給力向上に重要だ。
医薬品不足のきっかけは、ジェネリック医薬品メーカーの小林化工が起こした製造不正だ。21年に業務停止命令を受けると、他のメーカーでも問題が見つかり、次々と業務停止命令や改善命令が出た。その結果、違反がないメーカーへの発注が相次ぎ、供給が追い付かなくなった。
問題の原因はメーカーにあるが、背景には製薬産業の構造的な課題がある。ジェネリック医薬品の普及などによる薬価下落が続く中、各メーカーが比較的収益を得やすい「少量多品目生産」に傾き、それが供給を不安定にしている要因の一つと指摘されている。
このため公明党は今年5月、政府に対し医薬品不足に関する提言を行い、安定供給に取り組む製薬メーカーが市場で評価される仕組みの導入や、生産力増強などへの支援を求めた。安定供給を評価の指標にすることは業界の改革に資すると期待されている。
公明党の提言を受け、厚労省は専門家による検討会を設置しており、生産効率の向上策などを議論し、年内にも報告書をまとめる。医薬品の安定供給体制の構築につなげてもらいたい。