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【主張】介護離職が増加 仕事と両立可能な環境整備を
家族の介護や看護を理由に仕事を辞める介護離職が増加している。
厚生労働省は12日、介護離職を防ぐための新たな支援制度について、審議会で議論を始めた。介護のために離職を余儀なくされる事態は、本人だけでなく、社会にとってもマイナスとなる。仕事との両立を可能にする環境整備が必要だ。
総務省によると、介護を理由とした離職者は昨年、10万6000人に上った。5年前の調査と比べて7000人増加している。
働きながら介護をする人には、通算で3カ月休める「介護休業」や、時間単位で休みを取れる「介護休暇」などの制度があるが、厚労省によると実際に介護休業を取得したのは1.6%にとどまり、利用は低調だ。
当事者はどのような支援策を望んでいるのか。厚労省が2021年に行った複数回答の調査では「支援制度に関する個別の周知」が55.1%、「相談窓口の設置」が33.7%となり、制度が十分に知られていない実態がうかがえる。
公明党は育児休業で導入されている、事業主が従業員に個別周知・意向確認を行う制度を参考に、情報提供の手法を検討するよう政府に求めている。政府は企業と協力し、制度の周知徹底に努めてほしい。
介護休業などの支援制度を使うには職場環境の改善も欠かせない。先の厚労省調査では仕事を辞めた理由について、職場に両立支援制度がないことや介護休業を取得しづらい雰囲気があったとの回答が多かった。
少子高齢化で労働力不足が進む今、人材を失うのは企業にも痛手だろう。経済産業省は今年、介護離職に伴う労働損失などで30年には経済的損失が年間約9兆円に上るとの試算を公表した。25年には「団塊の世代」が75歳以上になり、働きながら介護をする人も増えていく。企業も本腰を入れて体制を整えるべきだ。
政府は今年度から、休業する従業員の代替として新規雇用などをした企業に対し、助成金を出す制度を拡充した。企業はこうした制度も活用してもらいたい。