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女性の健康支援で“司令塔”
ナショナルセンター来年度創設へ
政府は2024年度、女性特有の健康上の問題に関する研究・治療の司令塔となるナショナルセンターを創設する方針だ。女性が健康で活躍できる環境整備に向け、自治体や企業、医療機関、大学を含む研究機関などとの“官民学”の連携を強化するのが狙い。センターの概要を解説するとともに、公明党の竹谷とし子女性委員長(参院議員)に党の取り組みなどについて聞いた。
男女の違いにより多くの病気で「かかりやすさ」に違いがあることが最新の研究で分かってきた。
例えば女性は男性に比べ、ぜんそくや、うつ病などの疾患にかかるリスクが高いほか、加齢によるホルモンバランスの影響を受けやすく、摂食障害など健康上の課題も多い。
女性が社会の中で健康的に働いたり、安心して子育てできる環境整備には女性が抱える健康問題にしっかりと目を向け、丁寧に対応することが不可欠だ。
ただ実際の治療や予防では、既存の海外データが体格の異なる日本人に当てはまらないなど課題も指摘されており、新たな研究・治療体制の強化が急がれている。
このため政府は、24年度中に「女性の健康」に特化したナショナルセンターの創設をめざしており、厚生労働省は同年度予算概算要求に25億円の関連経費を盛り込んだ。政府が6月にまとめた「こども未来戦略方針」に明記されたセンター創設が、具体的に動き出すことになる。
厚労省によると同センターは、妊娠や出産などの研究に取り組む国立成育医療研究センター内に設置され、国を挙げた陣容で女性の健康支援策の拡充につなげていく。
複数の診療をワンストップで
同センターの機能の一つは、女性の健康に関わる相談窓口を設け、一度に複数の診療科が対応するワンストップ支援を実施すること。例えば、不妊に悩み心療内科に通う女性が希望すれば、不妊治療と精神的なサポートそれぞれの専門医につなぐ役割を担う。
医療・研究機関で情報を共有
また、女性特有の疾患に関わる研究・治療体制の強化については、医療機関や大学などの研究機関の間で情報共有を推進。医療データベースの拡充やAI(人工知能)などを活用した最先端研究を進めるとともに、得られた研究成果や予防医学の情報などを積極的に発信していく。
安心の職場環境整備も後押し
さらに、体調を崩した女性への生活支援にも取り組む。自治体や関連企業などと協力し、女性の疾患に関わるデータを集約することで、性差に着目したきめ細かな医療体制の提供に努める。雇用者全体の4割を占める女性が安心して働ける職場づくりなど、仕事と健康の両立も後押ししていく方針だ。
このほか、医学的な視点だけでなく、社会学や経済学などから生涯にわたる女性の健康に関する分析を推進。生活環境を改善する支援策の提示や調査研究の拡充などで政策提言も行っていく。
性差医療拡充へ公明の訴え実る
公明党女性委員長 竹谷とし子 参院議員
更年期障害や月経困難症、貧血などの症状で悩む女性は多く、こうした女性特有の健康問題への対処は喫緊の課題です。
米国では国立衛生研究所内に女性健康研究局を設置するなど、男女の違いに着目した「性差医療」を拡充させることで、女性の病気の原因解明や治療法の確立が大きく前進しました。
日本でも、ライフステージに応じた女性の健康を守るため、官民が連携して研究・治療に取り組む拠点づくりが求められています。
公明党は、女性が抱える不安を解消し、自分らしく生き生きと活躍できる社会をめざし、2008年に党女性委員会が政策提言「女性サポート・プラン」をまとめ、女性の健康を専門的に研究するナショナルセンターの設立を政府に要望しました。その後も粘り強く訴えた結果、今回の政府方針につながりました。
今後も人員や運営体制などセンター設立の具体化に向け全力で取り組みます。