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【主張】核軍縮の推進 兵器用核物質の生産禁止めざせ
「先人の努力により『主流化』した核軍縮の流れを確実に進めていくことが必要だ」
世界の核兵器数の減少傾向が逆転する危機に直面する中、岸田文雄首相は19日(日本時間20日)の国連総会一般討論演説で、核軍縮への道を閉ざさないために核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)構想の重要性を訴えた。
核軍縮の基盤をつくるFMCT実現へ核保有国も含め努力をすべきである。
FMCTとは核兵器に使用される高濃縮ウランとプルトニウムの生産を禁止する内容だ。冷戦終結後の1993年の国連総会で当時のクリントン米大統領が策定に向けた交渉開始を提案した。今年で30年になるがいまだ実現していない。
その理由は、非保有国から核軍縮交渉も同時に進めるべきだとの声が上がり、中国とロシアも宇宙の軍備競争防止も交渉する必要があると主張したからだ。
確かに、FMCTが実現しても現在ある核兵器が減るわけではない。核軍縮の問題とつなげて議論すべしとの考え方にも説得力はあるが、30年間も交渉開始が宙に浮いている現状は是正しなければならない。
そのためには核保有国との議論が不可欠である。しかし、2021年に発効の核兵器禁止条約を巡り、核保有国と同条約を推進した非保有国とは対話もままならない関係になっている。
この状況を打開するにはどうすべきか。公明党の山口那津男代表は岸田首相が国連でFMCTを訴える方針であることについて、19日の会見で「国際社会の関心が集中するように」積極的に取り組むよう求めた。その一つが双方の対話の橋渡しであり、公明党が一貫して訴えてきたことだ。
岸田首相は同演説で、対立の原因である核保有国の抑止論と非保有国の軍縮論の二項対立的な議論を乗り越える研究をする場として、30億円を拠出して「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」を海外の研究機関に設置すると表明した。対話の共通の土俵ができることを期待したい。