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【主張】市販薬の過剰摂取 若者の乱用拡大に歯止めを
せき止めや解熱剤といった市販薬を大量に服用する「オーバードーズ(過剰摂取)」が若い世代で広がっている。社会問題化が指摘される中、乱用に歯止めをかける対策が急がれている。
厚生労働省の研究班が、2021年5月から22年12月の間に、市販薬を過剰に摂取して全国7救急医療機関に救急搬送された122人を調査した結果、平均年齢が25.8歳で女性が97人(79.5%)となり、若年女性が多数を占めていた。
使われた市販薬は解熱鎮痛剤が24.9%と最多で、せき止め、かぜ薬が続いた。職業別では3人に1人が学生で最も多く、次いでフルタイムで働く人だった。
とりわけ気掛かりなのが、10代による過剰摂取の急増だ。薬物依存などで治療を受ける10代患者の実態を定期的に調べている国立精神・神経医療研究センターによると、14年にはゼロだった市販薬が原因の割合は、16年以降に急増し、22年には65%に上った。
過剰摂取する若者の多くは、人間関係の悩みや生きづらさを抱え、現実逃避や不安の緩和などのために手を出してしまうという。
ドラッグストアなどで容易に入手できることも拡大の要因とされ、研究班の調査では患者の6割以上が実店舗で購入していた。SNS(交流サイト)上には体験談などの情報があふれ、使用を助長している側面もあろう。
市販薬とはいえ用量を大幅に超えて服用すれば、けいれんや意識障害を引き起こし、内臓にも深刻な影響を与える。一部には依存性が強いものもあり、命に関わる。教育現場や地域で過剰摂取の危険性を繰り返し呼び掛けることが重要だ。何より薬に頼らずに済むよう、社会全体で寄り添った支援体制を整えたい。
厚労省は、市販薬に使用される成分の一部を「乱用等のおそれのある医薬品」に指定している。売る際には、原則1人1箱とし、子どもが買う時は名前や年齢確認の徹底などを求めている。薬剤師は、若者の使用状況や不審な点がないかなどに注意を払ってほしい。