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コラム「北斗七星」
漆黒の石片が、光りきらめく。その数およそ2000点。北海道遠軽町の「白滝遺跡群」から出土した黒曜石の石器などがこのほど、国宝に指定された。旧石器時代の遺物としては初にして、最古の国宝に◆火山岩である黒曜石は「天然ガラス」とも呼ばれ、割ると断面が刃物のように鋭くなるのが特徴。国内最大級の産地である同町北側の赤石山の麓には、100カ所ほどの遺跡がある。多様な出土品からは、約3万年前から1万5千年前ごろまでの石器の形状や、製作技法の変遷が見て取れる◆氷河期だった当時、食用になる植物は少なく、主に狩猟で糧を得ていた。獲物を狩る、さばく。皮をはいでは身にまとい、テントのように住まいを覆って寒さをしのぐ。やりや矢尻、ナイフなどに使い、衣食住を支え、その質を向上させる道具として価値が高かった◆この地の石器は、北はサハリン、南は東北地方などでも見つかっている。先人たちは、“最先端”の利器と技術を、どのように伝え広めたのか◆豊かな暮らしを求める人々の思いと悠久の営み。その後の縄文からアイヌの時代に至るまで、狩猟・採集を中心とした道内文化の原点ともいえ、知的好奇心を揺さぶる魅力に満ちている。(武)