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【主張】特許非公開 経済活動と安全保障の両立を
「最先端技術が、国際の平和および安全を脅かす軍事力の増強のために利用されることを防止するために連携する」
これは5月に広島で開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)で示された軍事技術の流出阻止に関する決意である。
政府は1日、日本の安全を損なう恐れがある25分野の技術に関し、特許情報を非公開にできる政令を閣議決定した。来春の施行に向け万全の準備を求めたい。
先進諸国の多くは安全保障に関わる技術の特許を非公開にする制度を既に整えている。日本は昨年ようやく経済安全保障推進法が成立し、特許非公開の導入を決めたばかりだ。
特許非公開でとりわけ議論になるのが経済活動と安全保障の両立である。
軍事技術といっても、先端技術の多くはデュアルユース(軍民両用)であるため、過度に特許非公開の範囲を広げると、民生分野における技術革新のチャンスをつぶすことになる。
これに関し、公明党経済安全保障対策本部の伊佐進一事務局長(衆院議員)は、推進法の検討段階から「技術保護が潮流になっているが、周辺諸国との経済・技術交流も重要だという前提でどう守るかを考える。これが基本認識だ」と強調。政府も「民間主体の自由な経済活動を促進する」「技術交流を妨げては元も子もない」として、経済と安全保障の均衡重視の考えを示した。
この結果、推進法第5条に「規制措置は、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない」と定められた。
内閣府によると、米国の年間特許出願は約60万件で、非公開は数十件程度という。こうした米国の運用も参考にする必要がある。
政令にある25分野にはジェットエンジンや半導体も含まれる。これらが過度に規制されると民間の技術開発に影響を与える。学術・産業界とも意見交換をし、研究者を萎縮させない運用体制を整えてほしい。