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進むヤングケアラー支援
22~24年度は“集中期間”
国は家族の介護や世話などを日常的に行う子ども「ヤングケアラー」への支援を強化するため、2022年度から24年度までの3年間を「集中取組期間」と定め、自治体の取り組みを後押ししている。公明党が推進した国の支援を“追い風”に各地で進む自治体の動きを紹介する。
■(兵庫県)配食通し実情に即した対応
兵庫県では、22年2月に「ケアラー・ヤングケアラー支援推進方策」を策定し、幅広い取り組みを実施している。
中でも特徴的なのが「配食支援モデル事業」だ。週1回、ヤングケアラーのいる家庭にお弁当を無料で届け、信頼関係を積み重ねる中で、より踏み込んだ支援につなげることが狙いだ。原則3カ月利用できる。
「家の中に他人を入れることに抵抗がある家庭が多く、なかなか支援が届かない現状があった」(県地域福祉課の岡田翼主幹)。しかし、この事業を通して、実情に応じた支援につながる家庭の割合は増えているという。
22年6月には県として「ヤングケアラー・若者ケアラー相談窓口」を設置し、電話やメール、LINEによる相談を実施。学校や医療、福祉関係者への普及啓発にも力を注ぎ、22年度は約1800人がオンラインの研修を受講している。
県では、配食支援モデル事業を除く、ほぼ全ての取り組みで国の制度を活用している。岡田主幹は「タイミング良く国の支援が始まり、財政面では非常に助かっている」と話していた。
■(埼玉県)“先輩”によるLINE相談
21年度からヤングケアラーの支援を展開している埼玉県では、学校現場での認知度向上へ、県内に在学する小学4年生から高校3年生までの全児童・生徒と教職員にリーフレットを配布した。県の調査では、2割未満だったヤングケアラーの認知度が8割を超えた。
22年9月には、国の制度を活用して、LINE公式アカウント「埼玉県ヤングケアラーチャンネル」を開設した。
元ヤングケアラーの“先輩”がLINEで親身に相談に乗ってくれるほか、体験談も紹介する。必要に応じて、当事者同士で悩みを話せるオンラインサロンなども案内する。利用者からは「早くここにつながればよかった」といった声が寄せられているという。
県地域包括ケア課の小南大樹主幹は「国の財源を活用することで、県だけでは難しかった事業を進めることができた」と語る。
■公明が主導、政府挙げ自治体を後押し
ヤングケアラーについて国は22年度から、①早期発見・把握②支援策の推進③社会的認知度の向上――の3本柱からなる支援策を進めている。
国の支援策が生まれる起点となったのは、21年3月の参院予算委員会での質疑だった。公明党の伊藤孝江参院議員が菅義偉首相(当時)から「省庁横断のチームにおいて当事者に寄り添った支援につながるよう、しっかりと取り組んでいきたい」との答弁を引き出した。
これを追い風に、当時、厚生労働副大臣だった公明党の山本博司参院議員が、厚労省と文部科学省による合同プロジェクトチームの設置を主導。省庁の垣根を越えた支援策の策定につながった。具体的には、自治体の取り組みを強く促す補助制度が設けられている。例えば、早期発見・把握に向けて、各自治体が行う実態調査は、経費の3分の2を国が負担する。
各地の公明議員が地方議会で、こうした国の制度の活用を求めた結果、実態調査に乗り出した自治体は今年2月末時点で250を超えた。
関係省庁の動きも加速している。文科省は22年12月、生徒指導の手引となる「生徒指導提要」にヤングケアラー支援について初めて記載。厚労省も年内の決定をめざす介護保険事業の新たな基本指針に、ヤングケアラーを含めた家族介護者の支援を明記する方針だ。
大阪公立大学大学院 濱島淑恵 准教授
地域差の解消へ底上げを
ほとんど知られていなかった「ヤングケアラー」という言葉の認知度が一気に上がり、相談先が明確になり始めたことは非常に大きな進歩だ。
一方で、取り組みにかなり地域差があり、どの地域でも必要な支援が受けられるよう、底上げを図る必要がある。
そもそも日本の介護保険制度では、家族介護者への支援は「任意事業」となっており、非常に位置付けが弱い。これを「必須事業」にしたり、支援メニューを充実させていくことが全年代のケアラーを支えていくことになる。
国と地方のネットワークを持つ公明党には、配食支援やレスパイト(休養)サービスなどの充実、民間団体への財政的支援と併せて、当事者に必要な支援が十分届くようになるまで、息の長い取り組みをお願いしたい。