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【主張】ゲノム医療法成立 活用促進と差別防止の両輪で
一人一人が持つ全ての遺伝情報を病気の治療や予防に活用する「ゲノム医療」。がんや難病に苦しむ人が安心して受けられるよう環境整備を着実に進めたい。
先の通常国会で成立した「ゲノム医療法」では政府に対し、ゲノム医療を進める基本計画の策定と必要な財政措置が義務付けられた。人体の設計図とされるゲノム解析が進み、病気の原因特定や治療薬の開発につながることが期待される。
近年、各国で実用化が進むゲノム医療の進歩は目覚ましい。胃がんや大腸がんでは原因となる遺伝子の変異に基づき、治療に有効な薬の選定が可能になっている。がんになりやすい体質かを調べ、リスク予防にも生かされている。
ただ、病気に関する遺伝情報の取り扱いには十分な配慮が必要だ。保険の加入や就職、結婚などさまざまな場面で差別につながる懸念があるからだ。
実際、生命保険協会と日本損害保険協会は保険の加入や支払いについて、遺伝情報の収集・利用は行っていないと公表しているが、保険金の支払いを巡り各社が医療機関などに遺伝情報を聞き取ろうとする事案が後を絶たない。自主規制だけでは限界がある状況だ。
そこで同法では「遺伝情報の保護と不当な差別の防止」を明記。遺伝情報を扱う医療機関などに情報管理の徹底を求めた。
政府は差別防止規定の周知とともに、差別に当たる事例や適切な情報の扱い方などを示すガイドラインの作成など、実効性ある対応に取り組むべきだ。
公明党はゲノム医療の推進と併せ、遺伝差別の防止を強く主張。同法に差別防止規定が盛り込まれたことに関し、がん患者の就労支援に取り組む一般社団法人CSRプロジェクトの桜井なおみ・代表理事は「患者らの不安の声に一番敏感に反応し、最初に動いたのが公明党」と語っている。
ゲノム医療の発展・充実には、正しい知識の教育・啓発や相談窓口の拡充なども欠かせない。当事者やその家族一人一人に寄り添う形で活用を促したい。









