ニュース
【主張】裁判員制度10年 着実に成果。国民の理解さらに
市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が始まって21日で10年を迎えた。市民感覚を裁判に生かす取り組みは着実に成果を上げている。社会に一層根付くことを期待したい。
裁判員裁判は今年3月まで約1万2000件に上り、9万人以上が裁判員や補充裁判員として審理に加わった。
最高裁がまとめた制度10年の総括報告書によると、全期間を通して経験者の95%超が「よい経験と感じた」と答え、約4分の3が「十分に議論できた」としている。こうした前向きな評価が大半であることは重要だ。
市民参加がもたらした変化にも注目すべきである。例えば、制度の導入前と比べて性犯罪の量刑は重くなる傾向にあり、性犯罪を厳罰化した刑法改正(2017年7月)を後押しした。
「裁判官任せの司法」から「国民参加の司法」への転換をめざした裁判員制度は、おおむね当初の目的通り運営されてきたといえよう。
一方、課題も残されている。
軽視できないのは裁判員の辞退率の上昇だ。昨年の候補者の辞退率は67%に上り、過去最高を更新した。
最高裁はその理由が、「審理の長期化」「人手不足や非正規雇用の増加といった雇用情勢の変化」「高齢化」「国民の関心低下」などにある可能性を指摘している。
このまま歯止めがかからなければ、「国民の縮図」であるべき裁判員の構成に支障を来しかねない。より参加しやすい環境づくりに知恵を絞るべきだ。
まずは、真相究明や公平性という大前提を維持しつつ、審理期間の短縮に努める必要がある。裁判員となった人に対する休業補償の普及も検討課題となろう。
何より重要なのは国民の理解である。模擬裁判や出前授業を通した法教育の充実や、裁判員経験者の声を広く社会に発信する取り組みを進めてもらいたい。適正な量刑をどのように導き出すか、裁判員の心理的な負担をどう軽減するかといった点についても、不断の検証が不可欠だ。
法務省は1月から有識者による制度の見直しに関する検討を開始した。議論には経験者をはじめ国民の声が十分反映されるよう努めてほしい。