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全国に広がる夜間中学
不登校の増加などでニーズ高まる
44校から再来年度、58校へ
「もう一度、学びたい」
公立の夜間中学が、再来年度に28都道府県58校まで広がります。不登校や外国籍の人が増える中、学び直しの場としてニーズが高まる夜間中学の現状とともに、浮島智子・党教育改革推進本部長(衆院議員)のコメントを紹介します。
国語の授業で教員の解説を聞く、さまざまな年齢の生徒ら=5日 仙台市
東北初の開校、公明党市議団が推進/仙台市
夕刻迫る頃、仙台市立南小泉中学校(五十嵐秀樹校長)の夜間学級の教室に灯がともります。壁に張られた時間割や学級通信は昼間の教室と同様ですが、七夕の短冊に「仕事と学校が両立できますように」と願い事が書いてあるのは夜間中学ならではです。
短時間のホームルームを終えると国語の授業が始まりました。詩を読んで頭に浮かんだ情景などを書き出し、グループごとに意見交換します。年齢や生活環境がバラバラの生徒たちは、同じ詩でも人によって感じ方が大きく異なることを楽しんでいました。同校の夜間学級は、東北地方初の公立夜間中学として今年4月からスタート。宮城県内に住む10~70代の計15人が「もう一度、学びたい」との強い気持ちで通っています。
かつて中学で不登校を経験したTさん(37)は「将来は子どもの福祉に関する仕事をしたい」という夢を抱き入学。「卒業後は通信制高校に通い、福祉資格の取得をめざす」として、昼は仕事、夜は勉学の“二刀流”に励みます。
生徒たちについて五十嵐校長は「個別の勉強だけでなく、皆で行動する学校生活にも喜びを感じているのではないか。一人でもできる『学び』よりも『学び合い』を大切にしたい」と話します。その思いに呼応するように、仙台市近郊から通学するMさん(34)は「夜間中学は自分らしさを出せる大切な居場所」と述べていました。
年齢や国籍問わず
公立夜間中学は、年齢や国籍を問わず義務教育を十分に受けられなかった人が入学対象となります。週5日間の授業があり、学ぶ教科は昼間の中学と同じです。全ての課程を修了すれば中学卒業が認められ、卒業生の約6割は高校進学や就職をしています。
仙台市での公立夜間中学を巡っては、公明党市議団(鈴木ひろやす団長=市議選予定候補)が一貫して設置を推進。2016年6月定例会で市に設置を訴えるなど、繰り返し要望してきました。
義務教育未修了90万人、整備の必要性浮き彫りに
公立の夜間中学は現在、17都道府県に44校が設置されています。在籍者数は1558人(2022年5月時点)で、戦後の混乱期に中学校を卒業していない人に加え、不登校などの理由から十分に中学校に通えなかった人や、日本の義務教育を受けていない外国人などが通っています。生徒の年齢も10代から70代以上と幅広く、多様な学びの“受け皿”として機能しています。
20年の国勢調査では、中学校を卒業していない義務教育未修了者が、全国で少なくとも90万人程度いることが分かるなど、夜間中学の全国的な整備の必要性が浮き彫りとなっています。
義務教育を十分受けていない人などに学びの場を確保することを目的とした「教育機会確保法」が、公明党の強力な推進で16年に成立。同法によって、夜間中学の設置などの措置を講じることが自治体の責務として規定されました。
国としても夜間中学について、全ての都道府県と政令指定都市に少なくとも1校を設置する方針を示し、新規開設や運営、教育活動の充実に向けた自治体への支援策を実施しています。
公明党の地方議員が各地で粘り強く設置を訴えてきたことも後押しとなり、25年度までには、福島市や愛知県など、これまで設置していなかった11県に夜間中学が開設され、28都道府県58校に広がる予定です。
浮島智子・党教育改革推進本部長
全県・政令市で設置めざす
さまざまな事情で義務教育を十分受けられなかった人が全国に大勢います。公明党は、そうした当事者や支援者の切実な声を受け止め、公立夜間中学の設置に長年にわたり取り組んできました。
2021年1月には「今後5年間で全ての都道府県・指定都市に少なくとも一つ設置されることをめざす」との歴史的な国会答弁を菅義偉首相(当時)から引き出し、公明議員が地方議会で訴え続けたことで、勢いよく開設が進んでいます。
近年、不登校生徒が増え続けています。“学び直しの場”として夜間中学の役割が高まっている中、昼間は「不登校特例校」として現役生を受け入れるなど、多様な設置形態が各地で生まれています。
今後も党のネットワークを生かし、全国に夜間中学を設置できるよう全力を尽くす決意です。