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本との出合い子どもたちに!
党女性委 学校図書館の充実へ勉強会
本の新陳代謝が進まず利用者減、読書離れへ
企業版ふるさと納税を活用
自治体が蔵書を購入しやすく
公明党女性委員会(委員長=古屋範子副代表)は6月28日、全国各地をオンラインで結び勉強会を開催。NPO法人「読書の時間」の田口幹人理事長から、学校図書館の整備に向けた課題や対策について聞きました。講演要旨を紹介します。
古屋委員長(左から2人目)らが出席して開かれた党女性委のオンライン勉強会=6月28日 党本部
NPO法人「読書の時間」理事長 田口幹人氏の講演要旨
■現状・課題
「子どもたちが本と出合える最も身近な場所は、学校図書館である」との考えから、同館を活用した読書推進活動に力を入れています。
その背景には、書店が一つもない「書店ゼロ」の自治体が昨年9月時点で26%に上るなど、本に触れる機会が減り続けていることがあります。また、2020年版の読書世論調査によると、1カ月に本を1冊も読まない人の割合が51.5%に上り、非読者が読者を上回るなど、読書離れに拍車が掛かっています。
さらに、私たちの独自調査では、小学生が読書を嫌いになった理由について、最多が「読書の必要性を教わらなかった」、次に「興味のない本を読まされた」「音読で恥をかいた」と続きます。調査を開始して約20年、この順位は変わっていません。「本が嫌い」、または「読書習慣がない」子どもが増えている状況だからこそ、本と出合い、学ぶ場を提供することが求められます。
その役割を果たすのが学校図書館だと思っています。しかし、同館の充実に必要な図書購入費が年々減少しています。政府が21年度、図書購入費として220億円の地方交付税交付金を措置したにもかかわらず、全国の自治体において図書の購入に使われたのは、6割弱の約126億円にとどまっています。交付金をどう使うかは自治体が決めることになっており、その使用割合は7年連続で減少しています。
その理由の一つは、文部科学省が定めた学校規模に応じた蔵書数の目安となる、「学校図書館図書標準」が関係しています。例えば、小中学校9校を抱える自治体に対して、図書購入費の使用割合が4割弱の理由を尋ねたところ、図書標準の達成率を満たしているため、現状の予算措置になっているという回答でした。また、国が定める蔵書数を下回ることへの抵抗感から、古い本を廃棄せず、更新していない自治体もあります。
このように本の新陳代謝が進まない古い学校図書館は、利用されなくなります。実際、08年と19年の学校読書調査によれば、この間に図書館を利用する小中学生が約2割減っています。
■必要な対策
必要な対策について提案したいと思います。それは企業が自治体への寄付を通じて、地域活性化を後押しする「企業版ふるさと納税」の活用です。自治体の図書購入費の予算が限られている場合でも、企業からの寄付を通じて追加の資金を獲得し、学校図書館に新しい資料を提供することが可能になります。実際、企業からのふるさと納税によって、例年以上の図書館資料を廃棄、更新できた自治体もあります。
今後、私たちは、図書購入の寄付を募る自治体と企業とのマッチングを行いつつ、提携する地元の書店を介して、学校図書館を活性化させたいと思います。ぜひ、その後押しをしていただきたい。この仕組みは何よりも、新しい資料による学びの機会を生徒たちに提供できます。自治体にとっては財源の確保、企業にとっては法人税の減税と社会貢献につながり、書店にとっては販売利益を増やすというメリットをもたらします。
さらに、私たちは学校図書館と連携した「読書推進プログラム」を提供しています。これは、生徒たちに本を好きになってもらうことを最優先に掲げ、本の基礎や、本との出合い方などを含め、大人になっても役立つ読書習慣を身に付けるための読書教育です。23年度、約100校でワークショップなどを交えて展開予定ですので、ぜひご覧いただければと思います。
また、魅力ある学校図書館の整備へ、蔵書内容の詳細な実態調査や、それに基づく適切な予算措置、司書の待遇改善にも取り組んでいただきたいと願います。