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コラム「北斗七星」
昔、インドの王が臣下を試そうと、油を満たした鉢を持たせて宮殿の中を歩かせた。一滴でもこぼせば、命を断つと。「油断」の語源という◆享楽や苦行だけといった偏った生き方に平穏はないとの教えだが、政治にも当てはまる。一方に偏ることへの戒めと受け取れよう。政治における中道である。欧州で吹き荒れるポピュリズム(大衆迎合主義)の嵐を遠目に、日本政治の安定を思う◆6月号の『潮』で一橋大学大学院の中北浩爾教授は、自公政権を「唯一の安定した連立の枠組み」と評価。「選択肢は、『自公』か『野党』かではなく『自公』か『風』かである」とし、「『風』頼みは、不安定な政治をもたらす」と警戒する◆一滴どころか、こぼれまくった油に強風で、日本の富と信用を焼失させたのが、民主党政権(2009―12年)だった。「国民への大政奉還」(所信表明)、「トラスト・ミー」(日米首脳会談)……。軽薄な“鳩山語録”を持ち出すまでもあるまい◆ところで、わが国には近代以降、改元時に激動に見舞われる歴史的ジンクスがあるという。「慶事に伴って時務に生じる国民の側の『油断』」(中西輝政・京大名誉教授、産経新聞・4月30日付)と。平成の悪夢を戒めとし、政治の安定に欠かせない中道政党の存在意義を語っていきたい。(也)