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ママと赤ちゃんの健康守る産後ケア、誰もが受けやすく
利用料を2500円減免
政府、所得制限なくし対象拡大
出産後、心身ともに疲弊した母親が休養できるよう助産師らが赤ちゃんのお世話をしたり、育児不安の相談などに応じてくれる産後ケア。市区町村が事業主体だ。政府は、ケアを受けやすい環境を整えるため、利用者負担の減免支援を今年度から拡充。対象者の所得制限をなくし、門戸を広げた。公明党が推進した施策だ。
出産後の女性は、育児疲れに加え、睡眠不足や女性ホルモンの変化などにより、産後うつを含む心身の不調を来しやすい。産後ケアは、そうした母子の健康を守るため、助産師らが育児をサポートしたり、授乳・沐浴のアドバイスや栄養指導、リラックスのためのマッサージなどで支援する。病院などで日帰りや宿泊のケアを受ける方法もあれば、家庭に訪問してもらう方法もあり、その形態はさまざまだ。
病院・助産院などに委託して産後ケアを実施する自治体に政府は補助金を交付しており、実施自治体は2021年度時点で、1360市区町村(全体の約8割)に上る。また、21年4月に施行された改正母子保健法でケアが自治体の努力義務とされ、政府は、24年度末までの全国展開をめざしている。
一方、経済的負担を理由にケアの利用を控える人がいることから、政府は普及に向け、22年度から住民税非課税世帯を対象に、利用者の負担を減免する補助を開始。市区町村と折半し、1回最大5000円を減免している。
今年度からは、所得制限をなくして対象を広げ、1回最大2500円(5回まで)を減免助成している。対象も「産後に心身の不調又は育児不安等がある者、その他特に支援が必要と認められる者」から「産後ケアを必要とする者」に改め、利用の“敷居”を下げた。
こども家庭庁の担当者は「ケアの普及に向け、多くの自治体に活用してもらいたい」と説明する。
自己負担が減少、申請数4月は前年の倍に/東京・町田市
拡充された産後ケアの利用料の減免措置を活用する自治体の一つが、東京都町田市だ。同市では、市議会公明党の推進で17年度から産後ケア事業を実施し、現在、市内外の12医療機関・助産院がケアを担っている。
市では4月から、住民税非課税世帯以外の利用者負担を、宿泊型の産後ケアの場合は1泊2日当たり6000円から3500円に、日帰り型の場合は1日当たり3000円から500円に引き下げた。訪問型は、1回当たり2000円から無償になった。
市の担当者によると、4月分の産後ケアの利用申請数は、前年同月比で2倍近くに伸び、減免措置も、その一助になったと考えられるという。
市内で宿泊型・日帰り型の産後ケアを提供する、としの助産院の野口としの院長(助産師)は「費用の問題で、ケアの利用をためらう人も過去にいた。減免により、使いやすくなったのは間違いない。問い合わせも増えている。母子の健康を守る上で良い対応だ」と評価する。
地域間の格差是正へ都道府県が積極的に関与
産後ケアの普及に当たっての課題の一つが、地域間の格差だ。産科医療機関などが少ない小規模自治体では、ケアの担い手となる委託先が限られてしまう。野村総合研究所が3月に公表した調査でも、自治体が産後ケアを実施しない理由(複数回答)に「委託先が見つからない」という回答が66.7%(宿泊型)を占め、多かった。
これらの課題の克服へ、政府は今年度から、母子保健対策強化事業を拡充し、都道府県に成育医療などに関する協議会の設置を促す予定だ。協議会を通し、産後ケアを含めた母子保健事業について、複数の自治体が広域連携しながら、委託先の確保などを進められるよう支援する。こども家庭庁は「都道府県の積極的な関与により、産後ケアの利用環境を、さらに整えたい」と話す。
■公明、国と地方議員の連携で推進
公明党は国会質問や政府への提言で産後ケアの充実を強く要望。地方議員も、各地で導入を積極的に訴えてきた。
今回の産後ケアの利用者負担の減免拡充についても、昨年11月に発表した「子育て応援トータルプラン」の中で、「利用料の補助や支援内容の充実を推進」と主張。国会質問でも、積極的に後押ししてきた。
党次世代育成支援推進本部長の山本香苗参院議員は「全ての親が、どこの地域でも産後ケア事業を利用できる環境を、国会、地方議員のネットワークを駆使し整えていく」と決意を述べていた。