ニュース
【主張】生成AI 著作権の侵害防ぐ対策が急務
自身の考えを工夫して表現した詩や小説、絵画などを創作した人(クリエーター)の作品は著作物であり、クリエーターの知的財産として保護される。クリエーターは他人が自身の著作物を使用する場合、使用料の支払いを求めたり、無断での複製を禁じるなど、著作物の扱われ方を決められる著作権を持つ。
それでは、人ではなく、AI(人工知能)が著作物を使用する場合はどうなるのか。依然、疑問は多く、論点整理を急ぐべきだ。
AIによる著作物の使用を巡る問題が表面化している背景に、生成AIの急速な普及がある。中でも、文章生成AIのチャットGPTや、画像生成AIのステーブル・ディフュージョンなどが有名だ。
政府は9日、知的財産推進計画を決定。生成AIが既存の著作物に似た文章や画像を生み出す恐れがあるとし、どういう場合に著作権の侵害に当たるのか、具体的な事例に即しながら論点を整理し、対策を検討することを明らかにした。
今や生成AIを用いた著作権の侵害は、まん延していると言っても過言ではない現状にある。例えば、クリエーターが架空の人物を描いたイラストをネット上に公表すると、他人が画像生成AIを使って、無断でその人物の髪の色や服装を改変し、別の作品として発表するといったことが頻繁に起きている。
生成AIはネット上の大量の文字情報や画像データを学習し、人間の指示に従い、文章や画像を即座に作り出す。クリエーターの懸念は、AIが著作権者の許可を得ることなく、営利目的か非営利目的かを問わず、自由に著作物の作風を学習できると著作権法で認められている点にある。
欧州連合(EU)は、AIが営利目的などで著作物を学習する場合、クリエーターが希望すれば、自身の著作物をAIの学習対象から除外できるというルールを定めている。日本はそうしたルールも参考にし、クリエーターの著作物を保護するための対策に万全を期すべきである。