ニュース
【主張】裁判記録の保存 一級の歴史資料を残す自覚を
裁判は社会を映す鏡でもある。証拠や双方の主張は事件の臨場感を伝える一級の学術的・歴史的資料だ。
しかし昨年、保存すべき多くの裁判記録が破棄されていた事実が発覚。最高裁は問題を検証し報告書を先月公表した。最高裁は裁判記録が「国民共有の財産」であるとの理念を明確にし、適正な保存のために常設の第三者委員会を設置する考えを示した。
司法の信頼回復へ改革を実行しなければならない。
重要な裁判の結果は社会に大きな影響を与えるし、国会は最高裁の違憲判決に対して新たな立法措置を取ってきた。こうした事実を熟知している裁判所が、なぜ重要な事件の裁判記録を安易に破棄していたのか。
「(大多数の裁判所職員が)記録の中には歴史的、社会的な意義を有するものも含まれているという視点での検討、取り組みを試みることがほとんどなかった」「最高裁が裁判記録を、国民のために後世に向けて主体的に保存しようとする姿勢が見られない」
これらは、破棄の調査に当たった有識者委員会から上がった声であり、裁判所の自覚の無さが厳しく批判されている。
今回の問題が発覚したのは、神戸家裁が26年前の神戸連続児童殺傷事件の裁判記録を破棄していたとの報道があったからだ。
この加害者は少年だったため、当時の少年法では被害者遺族でさえ少年審判の内容を知るすべが無く、真相を知るために民事訴訟を提起したが事件記録の閲覧はできなかった。その遺族は、いつか法改正で開示されるとの「わずかな期待もついえ去った」と、無念さを有識者委員会で語った。
司法の場では加害者も被害者も適正に扱われなければならない。しかし、裁判記録の安易な破棄は、被害者や事件関係者に「司法から軽視された」との思いを与えたのではないか。
裁判記録の適正な保存は、後世のために価値があるだけではない。事件に関係した人々の尊厳を守る意義もある。最高裁に真摯な取り組みを求めたい。









