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コラム「北斗七星」
「バーチャル・スラム」という言葉を耳にした。AI(人工知能)が個人の信用力を数値化するスコアリングが社会に広く浸透すると、いったん低い評価を受けた人たちが就職や結婚など人生のあらゆる場面で不利益を受け、社会的に排除される懸念を表現したものだ◆質問を通じて文章や絵を生成する「チャットGPT」の登場により、あらゆる分野でAIの実用に向けた動きが広がっている。生産性の飛躍的な向上に期待が高まる一方で、新たな格差や差別を生み出すことがないよう、細心の注意を払わねばならない◆そもそもAIに自分の点数を付けられるのは何か嫌な感じがする。人間が判断するよりもずっと公平でデータという根拠もあるはずだが、もやもやするのは人格まで値踏みされるように感じるからか◆人は何かのきっかけで意識が変わり、成長する。恵まれない環境で育ったり、その道の適性がないと思われていた人が一念発起して大成した例は枚挙にいとまがない。どんなにAIが進化しても、その可能性まで予測してスコアリングすることはできまい◆AIはデータ化できないものは扱えない。それを踏まえた上でどう活用していくか、人間の知恵が試されている。(杢)