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コラム「北斗七星」
「核戦争がもたらす破壊的な現実を強く想起した」。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の際、原爆資料館を視察したバイデン米大統領はそう語った◆同じ核保有国のマクロン仏大統領は「(被爆者の小倉桂子さんの体験は)衝撃的だった」と述べ、スナク英首相も「ここで起こったことを忘れてはならない」と断じた。世界の為政者が資料館を訪れ被爆の実相に触れた歴史的意義は大きい◆一方で今まさに、ロシアの核の脅威にさらされているウクライナのゼレンスキー大統領の受け止めは少し趣が違った。「ウクライナから影だけを残して人がいなくなってしまうとしたら恐ろしいことだ」。原爆の熱線で残った「人影の石」を挙げて語った言葉は胸に響くものだった◆広島サミットでG7とインドなど招待国は、法の支配に基づく国際秩序の堅持などで一致、連携強化を確認した。G7のウクライナ支援は世界を分断するとの声もある。しかしその原因は国際法に違反するロシアの侵略だ◆「ロシアがウクライナにいる限り話し合いにならない」(ゼレンスキー氏)だろう。一日も早く両国が対話のテーブルに着けるよう国際社会は結束してウクライナ支援に努めねばならない。(中)