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【主張】保護司の未来 多様な人材を登用できる制度に
罪を犯した人の社会復帰を支援し、再犯防止をめざす活動には民間人が多く協力している。特に、法務省の保護観察官と協働して活動する民間の保護司の役割は重要だ。しかし、担い手不足が深刻である。
法務省は今月から、保護司の将来像を考えるための検討会を設置し議論をスタートさせた。高齢化が進む保護司の世界に、若くて多様な人材を登用できる制度の構築を期待したい。
保護司は保護処分を受けた少年や、仮釈放中の人が地域社会で更生ができるように、月に2~3回、自宅に招くなどして指導や相談に当たる。法相が委嘱する非常勤の国家公務員であるが給与はなく、社会奉仕の精神で保護観察官の職務を補っている。
保護司は現在、約4万7000人で平均年齢は約65歳。全体の約8割が60歳以上だ。保護司になるための試験はないが、人格・行動について社会的信望があり、熱意と時間的余裕、生活が安定し健康であることが条件で、保護司選考会で認められる必要がある。
この条件では現役世代からの人材確保は難しい。現在は保護司個人の人脈や、地域団体からの人材情報が頼りになっている。豊かな人生経験も重要だが、社会で苦労をしている若い世代の経験も更生と社会復帰に役立つ。多様な人材を擁する保護司制度をめざす議論も必要ではないか。
法務省が昨年実施した、おおむね45歳未満で4年以上の経験がある若手保護司のフォーラムでは「自宅に呼んでの面接は負担」「事例集、体験談などの資料があるといい」「社会的信望など保護司の条件は敷居が高すぎる」との声が上がった。さらに「退職した人のための制度と感じる。現役世代に保護司になってもらうには現状のシステムを大きく変える必要がある」との指摘もあった。
政府は再犯防止を重要課題と掲げ、保護司の努力もあり着実に成果を挙げているが、2021年の刑法犯検挙者の約半数は再犯者だ。保護司の声に向き合って検討を進めてほしい。