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【主張】ひきこもり支援で手引 ニーズの多様化に沿った内容に
厚生労働省は、ひきこもり状態の人や家族を支援するため、初めてマニュアルを策定する方針だ。主に支援者向けで、自治体の相談窓口などでの活用を想定している。来年度の完成をめざし、今年度中に骨子をまとめるという。
本人や家族は苦しい胸の内を明かせず、孤立して社会と隔絶しやすい。当事者の目線に立った内容で、多様化するニーズに対応できる支援の充実につなげてもらいたい。
内閣府が3月末に公表した調査結果では、15歳から64歳でひきこもり状態にある人が全国で146万人に上ると推計した。調査では仕事や学校に行かず、自室や家からほとんど出ない状態が半年以上続く人に加え、近所のコンビニや趣味の用事の時だけ外出する人も含めて「広義のひきこもり」と定義している。
この年代で約2%に当たる人がひきこもり状態にあるとすれば、見過ごせない問題だ。
また調査結果は、全体では男性が多かったが、40歳から64歳の中高年では女性が半数超を占めた。従来、ひきこもりは男性が多いとされてきたが、性別を問わず支援の必要性は増していると言える。
こうしたことを踏まえ、厚労省は一人一人の状況に寄り添う「伴走型」を重視し、マニュアルの中身を検討する。有識者の意見を求めるほか、各自治体の支援事例を調査する方針だ。
例えば愛知県豊明市では、専門相談窓口を設け、本人が自由に過ごせる場と、家族が交流できる場の2カ所を設けるなど、安心できる居場所づくりに力を注ぐ。各地の取り組みを参考にした支援のほか、ひきこもりへの理解促進やオンライン相談支援の推進なども盛り込んでほしい。
近年は、80代の親が50代のひきこもりの子を支える「8050問題」が深刻化している。ひきこもる期間が長期化し、高年齢化が進めば親の負担も重くなり、生活が困窮する。政府は、こうした現状も踏まえ、きめ細かいマニュアル作りに努めることが重要だ。