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2019年5月15日

LAWS(自律型致死兵器システム) 規制論議の現状と課題

広島市立大学広島平和研究所 福井康人准教授に聞く

各国が開発競争でしのぎを削る一方、「殺人ロボット兵器」として開発禁止の声が高まっているのが自律型致死兵器システム(LAWS)だ。人工知能(AI)を搭載し、標的選択から攻撃まで人間の関与なく全て自動で行う。現在、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW=メモ参照)の政府専門家会合で規制のあり方について議論が続いている。現存しない兵器の規制論議は困難なため、3月の会合では結論が出ず、8月の会合で成果を出せるかどうかが注目されている。専門家として3月の会合に参加した広島市立大学広島平和研究所の福井康人准教授に議論の現状と課題を聞いた。

これまでの経緯

福井康人准教授

――LAWS論議は2014年からCCWで非公式に始まり、17年から政府専門家会合になった。現状は?

福井康人准教授 現実に存在しない兵器に関する議論であるため、具体的で明快な議論をすることは容易ではない。各国の代表団も、「キラーロボット反対キャンペーン」などの市民社会もさまざまな意見を表明しているが、LAWSの定義という基本的な問題でさえ合意できず、規制に向けた実質的な議論は遅々として進んでいない。CCWの議論がジュネーブで始まってもう6年目に入ったが、何ら成果が出せないのは残念である。

3月の政府専門家会合では、昨年の会合でまとまった報告書の中にある10項目について、これを「指針」として独立させることでようやく合意できただけだ。しかし、それを例えば議定書の形にするには、まだまだ相当な努力が必要になる。

日本政府の姿勢

機械に判断を任せず「人間の関与」求める

――日本政府は議論にどう貢献しているのか。

福井 安倍晋三首相は2月1日の参院本会議でLAWS規制を求めた公明党の山口那津男代表の質問に対し、日本としてLAWS開発の意図がないことを明言した上で、国際的なルール作りに積極的、建設的に参加すると表明した。国際司法裁判所は、政府高官の一方的宣言は法的拘束力を有するとの核実験事件判例も出している。それを踏まえると、この首相答弁は非常に重要だ。

こうした背景もあり、3月の政府専門家会合では私が見る限り、政府は従来以上に熱心で、事前に提出した作業文書も前回のものより格段に質が向上していた。

政府は作業文書の中で、いまだにまとまらないLAWSの定義に関し、「致死性」「人間の関与のあり方」の議論を深めるよう求めている。

特に国際人権団体からは、「人間の関与」なしに機械が人間を殺傷することに対する不安・懸念の声が上がっている。これに応えるためにも「人間の関与」の議論を深める必要がある。政府は、兵器に関する情報を十分に掌握した人間による関与を確保するなど、「有意な人間の関与」が必須であると指摘した。

禁止条約の可能性

実質的論議が進まず政治宣言が現実的か

――キラーロボット反対キャンペーンなどNGO(非政府組織)は、条約すなわちCCWの議定書として法的拘束力のある規制を求めている。

福井 政府専門家会合は8月の会合で終わるが、まだ議定書の形で合意できるような現状ではない。今月から会期間非公式協議が始まるので、新たなアイデアが出され8月には合意文書がコンセンサス(全会一致)で採択されることを期待したい。

しかし、実質的な規制論議が進まず、定義も不明確なままLAWSの禁止・制限を議定書にすると、各国の国内法整備が困難になり、結局、批准されなくなる恐れがある。

日本の場合、LAWS開発を刑罰で禁止しようにも、LAWSの定義があいまいであれば、どこまでを開発に含めるかなど犯罪の構成要件を定めることができなくなる。これでは国内法の整備は難しく、批准もできない。私は3月の会合で、議定書の追求は現時点では無理であり、まずは政治宣言として合意をまとめる案を支持すると発言した。

――政治宣言では実効性がないとの批判もある。

福井 CCWはコンセンサス方式なのでLAWS開発をめざす国が1カ国でも反対すると議定書は採択されない。それよりも合意できる政治宣言をめざすほうが現実的だ。法的拘束力がなくても、通常兵器の輸出管理を規制するワッセナー・アレンジメントのように一定の成果を挙げている枠組みもある。

また、LAWSはAI開発とも密接に関係する。日本の「人間中心のAI社会原則」や、欧州連合(EU)の「信頼できるAIガイドライン」など倫理規範の確立も進んでいる。LAWS規制が民生用AIの開発を阻害しないように、条約化にはさらなる議論が必要だ。

公明党の取り組み

河野外相(左から2人目)にLAWSに関する中間提言を手渡す遠山座長(同3人目)ら=3月11日 外務省

他党に先駆けて検討し政府に提言

LAWSが完成し配備、拡散されると、「銃の発明」「核兵器の開発」に続く、戦争における「第3の革命」になり、国際人道法や倫理上の観点から到底看過できない――公明党は国際社会のこうした不安、懸念を共有している。そのため、LAWS規制について他党に先駆けて検討を進める「LAWS開発規制に関する検討プロジェクトチーム」(PT、座長=遠山清彦衆院議員)を2月5日に設置。その検討を踏まえ3月11日には中間提言を河野太郎外相に提出した。

同提言は政府に対し「将来的にLAWS開発規制に関する法的拘束力のある文書を策定することを排除しない形で、政治宣言や行為規範等の具体的な成果文書をCCWで合意することをめざすべき」と要請。成果文書に、LAWSにも国際人道法その他の国際法が適用され、人間による指揮統制の範囲内に置かれるべきことが盛り込まれるよう訴えた。

NGOの見解

機械による攻撃判断は倫理的に問題

公明党のPT(衆院第1議員会館で2月20日開催)にNGOとして招かれた米ニュー・スクール大学のピーター・アサロ准教授(ロボット兵器規制国際委員会副会長)の発言要旨は次の通り。

標的の決定、攻撃を人間のコントロールなしにAIが行うとLAWSになる。AIは自分でディープラーニング(深層学習=膨大なデータから機械が自動的にその特徴を抽出すること)をするため、どう発達するか見当がつかない。無差別攻撃をしたり、人間の知らないところで攻撃を始めて紛争をエスカレートさせ戦争のリスクを高める危険がある。LAWSがハッキング(第三者の不正侵入)に遭う恐れもある。さらに、LAWSが大量破壊兵器になる可能性も持っている。

LAWS反対の一番の理由は倫理上の問題があるからだ。機械に人間の生死を決定させることで人間の尊厳がおとしめられる。標的決定の時など「有意な人間の関与」を確保させるための条約が必要だ。私たちは「有意な人間の関与」を定めた規範が欲しい。ただし、AIの素晴らしい面の利用まで阻んではいけない。

CCW

正式名称は「過度に損傷を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約」。1983年12月に発効し日本は同年に加入。適用範囲や改正手続きなど枠組みを定めた本体条約と、特定の兵器を禁止、規制する議定書からなる。現在、治療用のレントゲン撮影では検出不可能な破片を使う兵器や、目つぶしレーザーを禁止し、地雷、焼夷弾などを制限する議定書がある。

「あるべき指針」

今後の議論の方針であり、(1)国際人道法が適用される(2)使用責任は常に人間の側にある(3)人間の指揮統制の範囲内で稼働させる――などからなる。

ふくい・やすひと

1964年生まれ。パリ第1大学法科大学院修了。法学博士。87年に外務省入省。2015年から現職。

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