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コラム「北斗七星」
「相手に話が通じないことは日常茶飯事で、それが広がるとテロ、紛争が起き、戦争になってしまうこともあるでしょう」と語るのは養老孟司氏(3月6日付「読売」)◆平成最大のベストセラー新書となった氏の著書『バカの壁』が発行されたのは20年前、イラク戦争の渦中だった。そこには、近代の戦争は、相手が死ぬのを見ないで殺すことができる方向で「進化」し、その典型がミサイルであり原爆だ、とある◆そして、「おまえがやったことだよ」と、爆破の翌日、何万、何十万もの犠牲者が横たわる現地を目の前で見せれば、「普通はどんなパイロットだって爆弾を落としたがらなくなるでしょう」と◆10日後に広島でG7首脳会議が開催される。来日する各国のリーダーはぜひ原爆資料館を訪れ、被爆の実相を心に焼き付けてほしい◆『バカの壁』では、「話してもわからない」という“壁”があるのは、聞く側が、知りたくない情報を遮断しているからだと説く。その壁が、「人間は変わらないという誤った大前提」の上に置かれているとも。今、ウクライナを苦しめる大国の権力者の心に壁があっても、和平の実現を諦めるわけにはいかない。そこにある“誤った大前提”を取り払いたい。(三)