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【主張】空き家の増加 中古住宅として一層の利活用を
全国で空き家が増え続けている。総務省の調査によると昨年10月時点で846万戸に上り、過去最多を更新した。
5年前の前回調査と比べて26万戸の増加である。住宅総数に占める割合も0.1ポイント上昇し、過去最高の13.6%に達した。
管理が不十分な家屋が増えれば、地域の景観や治安の悪化に直結する。防災の観点からも問題だ。有効な対策がなければ空き家率は33年に27.3%に上昇するとの民間予測もあり、取り組みを一段と強化すべきである。
公明党が制定をリードした空き家対策特別措置法の全面施行から4年。固定資産税の納税情報を活用した空き家所有者の特定は進み、倒壊などの恐れがある空き家への立ち入り調査や所有者への撤去命令、命令に従わない場合の撤去の代執行も認められた。
依然、空き家は増えているものの、増加率を見ると前回調査に比べ大幅に低下している。特措法が一定の効果を発揮し、増加傾向に歯止めがかかり始めていることは明らかだ。この流れをさらに強め、空き家の減少につなげる必要がある。
そこで注目したいのが、中古住宅として空き家を利活用する取り組みだ。
全国の自治体では、空き家を手放したい所有者と住みたい人を結ぶ「空き家バンク」を設け、情報を共有する動きが広がっている。Uターンや田舎暮らしを希望する若者らに好評だ。
加えて、単身高齢者やひとり親世帯の住まいを確保する住宅セーフティーネットへの活用、災害時に被災者が入居する「みなし仮設」としての利用なども一層進めたい。
「品質が不安」といった中古住宅のイメージを払拭し、流通を促進する視点も重要だ。国は耐震性や情報開示などの基準を満たした住宅を「安心R住宅」として認定する制度を昨年創設した。制度の周知に努め、中古市場の価値を高めてほしい。
新たな空き家を生まない施策も求められる。岐阜県羽島市は「わが家の終活セミナー」を開き、司法書士らが住まいの相続や成年後見制度などについてアドバイスしている。所有者の管理意識を高める取り組みも必要だ。