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コラム「北斗七星」
学生の頃、憲法の基本書といえば佐藤功著『日本国憲法概説』だった。終戦直後、憲法草案策定に携わった佐藤は、物資不足の中、ろうそくの明かりで書類を書いたと後に述懐している。汗を流した“当事者”の手による基本書は論理的で分かりやすく、気迫すら感じた◆その佐藤が1955年に子ども向けに書いた本に『憲法と君たち』(牧書店)がある。東西冷戦真っ最中の当時、東側に対抗する“実力”を持つのに邪魔だと、憲法の謳う平和主義や基本的人権の尊重を敵視した勢力による、“押し付け憲法”を改正し戦前の日本に戻したいという復古的な改憲論がはびこっていた◆「大東亜共栄圏」という夜郎自大的な偽善スローガンの下、アジアの民衆を搾取・殺戮し、自国民も含め貧困と不幸に陥れた時代にだ◆佐藤は同書で、憲法のめざす理想について「平和ということと、民主主義ということと、国民の基本的人権ということの三つなのだ」と憲法の三原理を強く訴えている◆同書は7年前、時事通信社から復刻新装版が出された。扉書きに「憲法を知りたいすべての子どもたちと憲法が気になるすべての大人たちへ」とある。記念日に憲法の精神を確認する大切さを、思う。(唄)