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2023年5月2日

再エネ主力化へ支援強化

今国会で審議中のGX脱炭素電源法案 
送電網整備に交付金 
「原発に依存しない社会」を堅持

電力の安定供給と脱炭素社会化の両立をめざす「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が4月27日、衆院本会議で自民、公明の与党両党と、日本維新の会、国民民主の野党各党などの賛成多数で可決し、参院に送付された。同法案は政府が2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」に沿ったもので、同26日の衆院経済産業委員会において、与野党4党が共同で修正案を提出し、賛成多数で可決した。同法案のポイントを解説する。

法案のポイント

法案は、再生可能エネルギー(再エネ)の最大限の導入拡大に向け、送電網整備の支援を強化する。原発の運転期間については「原則40年、延長20年」の制限を堅持した上で、安全審査などに伴う停止期間を算入しないことなどが盛り込まれている。

再エネの普及に向けては、北海道と首都圏を結ぶ海底ケーブルなどの送電網整備に着手段階から交付金を支給する。岸田文雄首相は政府の「再エネ・水素等関係閣僚会議」の議論なども踏まえ、「政府一丸となって推進する」と述べている。

一方、原発の運転開始30年以降については、10年以内ごとに原子力規制委員会の審査・認可を受ける仕組みを導入。岸田首相は国会で「規制委が厳格に審査し、適合しなければ運転は一切認めない大前提は変わらない」と説明している。

与野党による法案の修正では、原発に対する信頼を確保し、理解を得るために必要な取り組みを推進する国の責務の中に、電力の大消費地である都市の住民を加え、協力を得る必要性を示した。また、法改正の施行後5年以内に政府が行う検討の対象に、原子力規制委による審査の効率化と充実など規制のあり方を加えた。

日本は、温暖化対策として2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする脱炭素化の目標を掲げている。また、ロシアのウクライナ侵略に伴う原油など輸入燃料の高騰は国民生活に影響を及ぼしている。化石燃料に依存した社会・経済構造の転換は喫緊の課題だ。

日本の電源構成の現状は石油や石炭、液化天然ガスによる化石燃料発電が約73%、太陽光などの再エネが約20%を占めている。

一方、原子力発電は11年の東日本大震災後、安全を最優先して稼働を全て停止。その後、原子力規制委員会による世界で最も厳しい規制基準の安全審査に合格し、地元の理解を得た原発のみ再稼働できるルールによって現在は10基が再稼働している。

こうした中、政府が2月に定めた「GX実現に向けた基本方針」は、再エネの主力電源化を柱に据えた。公明党の主張が反映されており、30年度までに国内で使われる電力の36~38%を再エネで賄うとの目標達成に向け、課題となっている送電網の整備を強力に進める。

徹底した省エネも柱の一つだ。中小企業の省エネ化を支援する補助金の創設や、断熱効果の高い省エネ住宅への支援などが盛り込まれた。

また、原発の新設や増設は行わず、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の導入については、地域の理解を大前提に廃炉を決定した原発の敷地内での建て替えに限るとした。

これらの取り組みにより、原発に依存しない社会をめざす。

■温暖化対策の新制度 脱炭素投資、10年で150兆円超

GXを進めるには膨大な資金が必要だ。このため基本方針は、新たな国債「GX経済移行債」を発行するとした。GX経済移行債の償還財源は、企業の二酸化炭素排出に金銭負担を課す「カーボンプライシング」の導入で調達する。

カーボンプライシング導入に向けては「GX推進法案」が、4月28日の参院本会議で賛成多数で可決された。同法案は、参院で修正されたため、衆院に戻され、修正部分の採決が行われる。

GX経済移行債については今年度後半に発行を始める。脱炭素の実現に向け、政府は今後10年で官民計150兆円超の投資を見込んでおり、うち20兆円はGX経済移行債で調達する。50年度までに償還する計画だ。政府は、環境分野や脱炭素社会への移行に向けた投資などに使っていく考えを示している。

一方、カーボンプライシングに関しては、企業などが排出量を削減した分を市場で売買できるようにする排出量取引を26年度から本格稼働させるほか、化石燃料を輸入する電力会社や石油元売り会社などに対し、排出量に応じて賦課金を求めるとしている。

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