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空き家対策の強化へ
新たに「管理不全」も指導対象に
放置は税優遇から除外
今国会で改正法案成立めざす
増え続ける「空き家」の問題で、政府は3日、管理が不十分な物件について固定資産税を減額する措置を解除することなどを盛り込んだ「空き家対策特別措置法改正案」を閣議決定した。今国会での成立をめざす。同法案を解説するとともに、斉藤鉄夫国土交通相(公明党)に対策のポイントを聞いた。
公明党のリードで制定された2015年全面施行の空き家対策特別措置法は、倒壊の恐れがある空き家を自治体が「特定空き家」に指定し、立ち入り調査や除却命令、さらに除却の代執行まで可能とした。現在、同法に基づく空き家の除却や修繕が各地で進められている。
しかし、空き家の撤去が各地で進められているものの、今後も居住目的のない空き家が増える見通しであることを踏まえ政府は、特定空き家になる前の段階での対策を強化する。
居住目的ない家、20年前の1.9倍に
国土交通省によると、居住目的のない空き家は、この20年間で1.9倍に増加し、30年には470万戸になると推計される。国交省は今回の改正法案で、その数を400万戸程度に抑えることを目標としている。
改正法案では、管理が不十分な物件を新たに「管理不全空き家」と規定。改善の行政指導に従わなければ、ペナルティーとして、住宅としての固定資産税の優遇措置を解除し、適正管理や有効活用を促す。現状の試算では「管理不全空き家」は全国で50万戸に上る見込みだ。
全国には別荘や賃貸用などを除く、居住目的のない空き家が約350万戸(18年)あるとされる一方、これまで市区町村が特定空き家として把握したのは4万戸にとどまる。
このうち2万戸は解体や修繕で対応が取られたが、特定空き家に至らないまでも、放置すれば管理状態の悪化が見込まれる空き家は20万戸以上ある。
住宅が立っている土地には、固定資産税が6分の1に減額されるなどの優遇措置がある。これが老朽空き家を解体して更地にせず、放置する一因とされる。
「管理不全空き家」は、窓が割れていたり、雑草が繁茂したりしているものを想定しており、特定空き家同様に、行政が指導・勧告し、税の優遇措置を解除できるようにする。管理不全空き家の基準は今後、指針で定める。
また、空き家の活用を重点的に進める「促進区域」を市町村が設定し、カフェや宿泊施設へ転用しやすくする。法施行後5年間で100区域の設定をめざす。
促進区域は、観光振興に取り組むエリアや中心市街地などに設けることを想定。市町村が区域や活用指針を定める。用途が住宅や公共施設に限定されているエリアでも、指針に明記すれば、店舗や旅館への転用を特例で認める。
接する道路が幅4メートル未満の建物を建て替える場合、4メートル以上になるよう位置をずらす義務があるが、安全確保を条件に免除する特例も設ける。
活用の道を広げたい
国土交通相(公明党) 斉藤鉄夫
近年の空き家の増加を抑制するため、対策強化は急務です。2022年10月に設置された国交省有識者委員会の議論を踏まえ、空き家対策を総合的に強化する法案を今国会に提出しました。
具体的には、空き家の活用を促進すべき区域における空き家の用途変更や建て替えなどを促進します。さらに、放置すれば特定空き家になる恐れのある空き家に対する指導・勧告、特定空き家に対する緊急代執行制度の創設などの措置を講じます。
一方、今回の法案に加え、予算や税制による支援・対策を拡充します。こうした措置により、空き家対策の総合的な強化をめざします。
これまでは、どちらかというと特定空き家の除却に焦点がありましたが、今後は特定空き家になる前にしっかり手を打つと同時に、活用を進めます。