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若者支援「孤独にならないで」
気軽に寄れる居場所、好評
東京・大田区
コロナ禍で人とのつながりが希薄になり、孤独感を深める若者が増える中、東京都大田区は、若者サポートセンター「フラットおおた」を開設し、家でも学校でもない気軽に立ち寄れる居場所を提供している。昨年10月末の開設から月平均延べ約120人が利用し好評だ。区議会公明党(松本ひろゆき幹事長)のメンバーと、佐藤しげゆき、鈴木ゆみ、あまの雄太の各党副支部長(いずれも区議選予定候補)がこのほど、現地を視察した。
“人生の先輩”から学ぶ講演、悩みを個別相談できる体制も
「世界にも書道の魅力を発信し、新たな可能性を探りたい」。夢の実現に向けて活動する書道家の話に、「フラットおおた」を訪れた若者は熱心に耳を傾けていた。“人生の先輩”が、どのような半生を歩み、なぜその職業を志したのかを聞く「会ってみるシリーズ」の一幕だ。
書道家の男性は「長所は人それぞれ。自身の好きなことを突き詰めながら一歩ずつ前に進んでほしい」とエールを送った。同シリーズは月2~4回実施しており、フラットおおたを定期的に利用する10代の女性は「講師が多種多様で、いろいろな生き方が学べて楽しい」と語る。
JR大森駅近くに設けられたフラットおおたは、おおむね15~39歳の区民に加え、区内在学者、同在勤者が利用対象。社会福祉士や臨床心理士などの資格を持つ20~60歳代のスタッフが常駐する。マンガや小説、ボードゲームが備えられた部屋「コネクトポートぱる」の利用時間は、第3土曜日・日曜日・祝日以外の午前9時半~午後7時までで、無料の登録を済ませると予約なしで利用できる。20日現在で71人が登録している。
個別の困り事を打ち明けられる相談体制も充実している。来所面談のほか、Webチャットでの相談を受け付け、来所が難しい人にも配慮する。希望に応じて教育や就労、児童福祉を担当する行政機関と連携し、支援につなげている。昨年10月末の開設以来、寄せられた相談件数は、延べ481件(2月末時点)。「大学に進学したもののオンライン講義が普及し、友人ができない」「在宅勤務が増え、気軽に話せる同僚がいない」など、交流機会の減少を吐露する内容も多いという。
10年来、若者支援に努めてきた桜庭千明センター長は、コロナ禍で想定以上に孤立する人が増える現状を驚くとともに、「若者が元気を取り戻し、前向きに暮らせるまで支えていきたい」と意気込む。
ひきこもりや不登校、貧困など若者を取り巻く複合的な課題を解決するため、区は2021年3月、「大田区子ども・若者計画」(21~25年度)を策定。分野の垣根を越えた横断的な連携を推進し、子ども・若者の社会的自立を後押ししている。さらなる体制強化に向け、区青少年健全育成担当課の佐藤邦子課長は「オンライン型や出張型の相談事業にも取り組んでいきたい」と話していた。
佐藤課長(右端)からセンターの説明を受ける区議会公明党のメンバーら
区議会公明党は議会質問を通じて、若者の属性、世代にかかわらず、包括的に相談を受け止める体制の必要性を求めるとともに、人と人とが交流できたり、ゲストを招いた講演会を開いたりする居場所の確保を訴えていた。