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日韓首脳会談の意義
民間交流拡大の弾みに
日米韓の安保協力、緊密化も
慶応義塾大学名誉教授 小此木政夫氏に聞く
16日に行われた岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領の首脳会談を機に、日韓関係は改善へ大きく進み始めた。今回の首脳会談の意義や今後の展望などについて、国際政治学者の小此木政夫・慶応義塾大学名誉教授に聞いた。
――今回の日韓首脳会談をどう見るか。
小此木政夫・慶応義塾大学名誉教授 元徴用工問題に対する解決策の提示から尹大統領の訪日まで韓国側の対応は非常に戦略的だ。
尹大統領は、4月下旬に予定している訪米前に日本との関係を修復しようと決断したのだろう。北朝鮮の脅威や米中関係の悪化などに対応するため、日米韓の安全保障協力を立て直すという明確な意思を持っている。そのために、尹大統領はリーダーシップを強く発揮した。
――韓国では、どう受け止められているか。
小此木 元徴用工問題の解決策が発表された時の国民の反応は厳しいものだった。ただ、日本との関係改善については、特に若者の多くが歓迎していると見ている。世論は単純ではない。
韓国国内の与野党対立の次元で論じられている側面もある。先日、ソウル市内で行われたデモを実際に見たが、プラカードの大半は「屈辱外交反対」などといったもので、日本に対する批判は、ほとんどなかった。以前、日本製品の不買運動などが起きた時とは明らかに違う。デモも組織化された印象が強かった。今回の首脳会談の評価は、尹大統領の訪米などの成果を総合的に見なければ難しいのではないか。
――今後の日韓関係の展望と課題は。
小此木 両国首脳が相互往来する「シャトル外交」が再開し、民間交流も拡大していくだろう。一方で「今後、政権が交代したら、逆戻りするのではないか」との懸念は否定できない。ただ、尹政権の5年間の実績を次の政権が完全に無視することはできない。これからの日韓関係の改善が韓国国民に満足感を与えるものであればあるほど、それを覆すことは容易ではなくなる。
日本側も歴史問題のトラウマを克服して戦略的にならなければならない。
日米韓の安保協力が求められる厳しい国際情勢は、今後も続くだろう。だからこそ、今後も日韓関係の緊密化は不可欠だ。
民主主義、人権など
普遍的価値を基に両国関係を深めよ
山口代表の訪韓を評価
――日韓関係改善へ公明党に期待することは。
小此木 昨年末の山口那津男代表らの訪韓は、戦後最悪とまで言われた日韓関係の改善に向けた取り組みとして評価したい。これからは歴史ではなく、民主主義や人権といった普遍的な価値を土台とした日韓関係、民間交流が必要だ。公明党は、その先頭に立ってもらいたい。