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初乗り運賃補助で移動支援
注目の「タワラモトンタクシー」
奈良・田原本町
奈良県田原本町は昨年度、移動に困難を伴う人の外出を支援するため、民間タクシーの初乗り運賃を補助する「タワラモトンタクシー」事業を開始し、大きく成果を上げている。従来のデマンドタクシー事業と比べ、1カ月の平均利用回数は5倍に増加。予約の競合が少なく、近所同士で自主的に乗り合うケースもあり、今後の展開が注目される。
タワラモトンタクシー事業の利用者から話を聞く(左から)松本、古立の両町議
同町は2010年から、買い物や通院などの移動に困難を伴う人を支援するため、乗り合いのデマンドタクシーを運行してきた。登録者は2000人を超え、1日の平均利用者は24人(17年度)だった一方で、年に一度も利用しない登録者が全体の8割を占め、利用者の偏りがみられた。
原因は利便性が良くないこと。町が行った登録者へのアンケートなどでも、3時間前までに予約が必要な点や、最大2台と少ない運行台数、停留所までの移動負担に対し改善を求める声が目立った。利用していた住民は「午前中の早い時間に利用したい場合、前日に予約しなければならなかった」と話す。
高齢者や妊婦、障がい者ら対象
昨年7月にデマンドタクシーに替えて開始した「タワラモトンタクシー」事業は、町内の民間タクシー会社4社で使えるチケットを町が独自に発行し、タクシーの初乗り運賃680円を助成する仕組み。70歳以上の高齢者や妊婦、未就学児に年間24枚、身体障がい者らに年間12枚のチケットを配布する。利用時間は午前8時から午後6時(月曜日から土曜日)で、複数での乗り合いや、発着のいずれかが町外の場合も補助対象になる。事業名は同町公式キャラクターのミニブタの名前からとった。
デマンド方式から切り替えで、利用回数が5倍に
町によると、事業開始直後にデマンドタクシーの登録者数を上回り、昨年度はそのうち6割超が実際に乗車。月平均の利用回数はデマンドタクシーの5倍で推移しているという。成果を上げた背景には、町内を巡回するバス路線がないことや、鉄道駅のある中心部から半径約3キロに収まる“コンパクトな町”の特色が生かされたことも大きい。
担当者は「ニーズに応えるために大きくかじを切った」と話し、町行事の出席率やタクシー会社のサービス向上につながるといった相乗効果も生まれていると強調する。今後、免許返納や健康づくり活動など他事業との連携も視野に入れていく考えだ。
昨年度から、タワラモトンタクシーを利用している山崎礼子さんと玉置イサ子さんは「電話を入れたら家の前まで来てくれるのが助かる」「1枚のチケットで近所の友人と乗り合わせもしている」と笑顔で語っていた。
公明党の松本美也子、古立憲昭の両町議は15年9月定例会などで、買い物弱者対策やデマンドタクシーの課題を取り上げ、改善を訴えていた。