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2023年3月8日

現地リポート 山口代表が福島第1原発を視察

東日本大震災12年

東日本大震災12年を前にした今月4日、公明党の山口那津男代表は、東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)を視察した。福島の復興・創生を確かに進める―との強い決意で、同原発の廃炉作業の進ちょく状況をつぶさに調査し、課題を探った模様をリポートする。=東日本大震災取材班

燃料取り出しへ作業進む
放射線量下がり、軽装備で調査

原発構内へ入る前、山口代表らは、不織布ベストを羽織り、防じん用マスク、軍手をはめた。靴下は2枚重ね、専用ゴム靴を履く。ベストのポケットには線量計と入構証を収めた。

2012年6月9日、原発事故後、政党として初めて構内に入った山口代表らは当時、全身を包む白い防護服に着替え、フィルター入りの全面マスクを着けて視察に臨んだ。現在は構内96%のエリアを特別装備なしで往来できるまで放射線量が下がったという。

一行は、高台から1~4号機の原子炉建屋を見渡しながら、廃炉作業を視察。3、4号機では使用済み燃料プールからの燃料取り出しが完了しており、東電は、1、2号機からの燃料や燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)の取り出しへ作業を進めている。

1号機付近では解体作業へ建屋などを覆う大型カバーの設置作業が、2号機の建屋の周りでは、使用済み核燃料を取り出す作業用構台の設置作業が進んでいた。小野明・福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者は「23年度には燃料デブリの試験的取り出しをめざす。安全第一で着実に推進したい」と説明した。

小早川社長(右端)らから廃炉作業の進ちょく状況の説明を受ける山口代表(中央)ら。左側にある2号機では作業用構台の設置工事が進み、カマボコ型のドーム屋根で覆われた3号機では燃料の取り出しが完了

山口代表らは、トリチウム以外の62種類の放射性物質を取り除くことができる多核種除去設備(ALPS)と、その処理水を貯蔵するタンクを車内から見学。次いで、タンク内の処理水を海洋放出するための希釈設備や海水移送ポンプ、放水口などの工事現場を訪れた。

東電の計画では、処理水をいったん、タンクにためてトリチウム濃度を測定。「1リットルあたり1500ベクレル以下」となるよう海水を混ぜて、海底トンネルを通し、約1キロ沖の放水口から流す。

小野氏は「海洋放出する際のトリチウム濃度は国の基準6万ベクレルの40分の1、世界保健機関(WHO)が定める飲料水ガイドラインの1万ベクレルの7分の1」と解説。山口代表は「漁業者や住民が安心できるよう説明を尽くしてほしい」と話した。

魚介類の飼育試験「影響は確認されず」

「海洋生物飼育試験施設」では、通常の海水を入れた水槽とALPS処理水を混ぜた海水を入れた水槽で、ヒラメとアワビを飼育し生育状況を比較している。どちらも「常磐もの」の海産物だ。山口代表は同施設で、ヒラメへの配合飼料の給餌を体験。沈むエサにヒラメが勢いよく食い付く。担当者は「5カ月間の飼育で生育への影響やトリチウムの生体内での濃縮は確認されていない」と報告。近く、福島沖に生育する海藻・ホンダワラでの実験に着手する。

東電幹部と意見交換

小早川社長ら東電HDの幹部と意見交換する山口代表

視察を終えた一行は東電幹部と意見交換。山口代表は「廃炉のプロセスをやり遂げることが福島の真の復興につながる」と強調。その上で「処理水の海洋放出は、風評を生まぬよう科学的根拠に基づき丁寧な説明を」と求めた。

小早川智明社長は「福島の復興には廃炉の着実な推進が重要であり、責任を果たしていきたい」と語った。

取材後記

防護服は気密性が高く、身にまとうとサウナのように暑くなる。全面マスクは重く、息苦しい。着用後、30分もすると頭痛がする……。11年前、山口代表の原発視察に同行したことを思い出す。

当時、放射線量が高い作業現場が多く、構内は緊張感がみなぎっていた。今では、一般的な作業着姿の人々が働き、食堂やコンビニエンスストアも設置され、労働環境も大きく改善した。働く女性の姿も増えたようだ。

その一方で、燃料デブリの取り出しや処理水の処分など、世界でも前例がない困難な作業は緒に就いたばかり。東電には、安全第一の徹底とともに、廃炉に向けた国内外の英知の結集が望まれる。

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