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【主張】仲裁法の改正 国際標準の紛争解決制度めざす
経済グローバル化の中、企業の国際取引上の紛争を解決する制度の主流は「裁判所による裁判」から「仲裁機関による国際仲裁」に移っていると専門家は指摘する。
しかし日本は仲裁を国際ビジネスを支える基盤と考える視点が弱かった。ようやく政府は先月、国連機関が17年前に改正した仲裁モデル法に基づく仲裁法改正案を閣議決定した。国際標準の紛争解決制度として整備を急ぐ必要がある。
仲裁とは、紛争の解決を中立公正な第三者である仲裁人に委ね、その判断に従う制度である。
第三者の判断に従うことは裁判と似ているが、裁判官と違って仲裁人は紛争当事者の合意で選任できる。問題に精通した専門家に解決を託せるし、仲裁を補助する仲裁機関や仲裁地も自由に選べる。原則非公開のため企業秘密も守られる。また、裁判の判決に当たる仲裁判断は、日本も締結しているニューヨーク条約によって国境を越えた強制執行が可能である。
さらに、仲裁人が当事者に財産処分や証拠廃棄を禁じる暫定保全措置を命じた場合、従わなければ仲裁地の裁判所で執行できる。
この暫定保全措置の裁判所による執行は国連機関の改正仲裁モデル法で導入され、多くの国が従っている。今回の仲裁法改正案は同様の規定を創設することが目的だ。
これによって日本の仲裁制度を国際標準とし、仲裁地として選ばれることが期待される。現在、仲裁地は欧米が主流で、アジアではシンガポール、香港、ソウル、北京、上海などが紛争解決件数を伸ばしている。
海外での仲裁は大企業には対応できても、中小企業にとっては大変な負担になる。日本を仲裁地に選んでもらうためには、仲裁機関や仲裁人の層を厚くするだけでなく、低価格で利用できる仲裁施設や、外国語やIT機器にも精通したスタッフも欠かせない。
グローバル化の中で生き抜く以外に選択肢のない日本である。本腰を入れて取り組むべき課題だ。