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【主張】電子処方箋 医療分野のデジタル化へ普及を
医師が発行する処方箋をデジタル化した「電子処方箋」の運用が1月末から始まった。医療機関と薬局、患者それぞれにメリットがあり普及させたい。
電子処方箋は、医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX=デジタル技術による変革)を進める上で重要な取り組みだ。マイナンバーカードの申請数が9400万件を突破する中、医療の面でもデジタル化の恩恵を受けられるよう環境整備を進める必要がある。
電子処方箋は、医師が患者に処方した薬の情報をオンラインで国の専用サーバーに登録し、薬剤師が画面上で確認できる仕組みだ。患者は薬局でマイナカードや保険証を提示することで処方薬を受け取れる。電子処方箋を選ぶかどうかは患者が決める。
利点の一つは、医療機関や薬局が、患者の過去3年分の服薬歴にアクセスできることだ。これにより、患者が複数の病院で処方箋を受け取った場合でも、薬の重複や飲み合わせの悪い処方を防ぎやすくなる。
患者も、マイナンバーの個人向けサイト「マイナポータル」から服用歴を確認できる。従来の「お薬手帳」で生じていた記録漏れの心配はない。また、オンライン診療や服薬指導を組み合わせれば、自宅にいながら診察から処方まで受けることが可能になる。
重複処方の減少による医療費抑制も期待されている。厚生労働省によると、昨年秋に四つの地域で実施したモデル事業では、約5%の重複処方を検知できたという。
課題は、医療機関や薬局への普及率が低いことだ。1月の運用開始時点で対応可能な施設は30都道府県の計154施設にとどまる。導入の意向があるところも全体の2割に届かない。
理由としてはシステム導入費やエンジニアの人手不足などが考えられる。電子処方箋には、マイナカードの保険証利用などに関するシステム導入が必要だ。政府は電子処方箋の必要性やメリットを丁寧に説明し、普及に努めてほしい。