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東日本大震災12年 福島復興、党挙げて
寄り添う支援さらに
山口代表が原発視察、課題を調査
東日本大震災から間もなく12年を迎える。公明党の山口那津男代表は4日、東京電力福島第1原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)や、「震災遺構」として保存されている同県浪江町立請戸小学校を訪れ、被災地の現状や課題を探った。その後、党福島県本部(代表=今井久敏県議)の「復興加速化会議」に出席した山口代表は、被災地の12年に思いを寄せ、「復興への道は、これからも決して容易なものではないが、力を合わせ、共に寄り添い、乗り越えていきたい」と訴えた。
原子炉建屋を見渡す高台で廃炉作業の進ちょく状況を小早川社長(右端)らから説明を受ける山口代表(中央)ら=4日 東京電力福島第1原発
山口代表らは、東京電力福島第1原発を訪れ、東京電力ホールディングス・小早川智明社長らの案内で廃炉作業や処理水対策の進ちょく状況を確認した。1~4号機の原子炉建屋を俯瞰する高台では、炉心溶融で溶け落ち固まった核燃料(燃料デブリ)の取り出し作業用構台の設置工事を視察。小野明・福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者から「2023年度には燃料デブリの試験的取り出しをめざす」と説明を受けた。
次いで、建屋内に滞留した汚染水を浄化処理する多核種除去設備(ALPS)や処理水の保管タンク群を車内から見学。この後、タンクにたまったALPS処理水希釈放出設備の工事現場を視察した。これは同原発沖合約1キロまで海底トンネルを掘削し、除去設備で取りきれないトリチウムの濃度を海水で薄め、国の基準の40分の1未満にして海に流す計画。小野氏は「今春には工事を終えたいが、処理水の海洋放出には漁業者や住民の理解を得て、国と連携しながら進める」と述べた。
小早川社長は「円滑な廃炉には、処理水の処分が不可欠。安全確保を最優先に科学的根拠に基づく情報発信と丁寧な説明で信頼の醸成に努力したい」と述べた。
山口代表は「廃炉のプロセスをやり遂げることが福島の真の復興につながる。公明党は地方議員、国会議員が力を合わせて福島に寄り添った復興に全力を挙げる」と語った。
風化と闘い教訓伝える 震災遺構「請戸小学校」訪問
津波で被災した請戸小学校を見て回る山口代表(左から4人目)ら=4日 福島・浪江町
一方、山口代表らは、福島県内で初めての震災遺構・浪江町立請戸小学校を視察した。
海岸から約300メートルの請戸地区にある同校は、高さ15メートルの大津波が押し寄せ、校舎2階の床上10センチまで浸水。当時、校舎にいた児童82人、教職員13人は高台へ避難し無事だった。その後、原発事故により全住民が避難を余儀なくされた。町は、この旧校舎を「震災遺構」として保存・整備し、21年10月から一般公開。地震、津波、原発事故の複合災害の脅威と被災者の体験を映像や展示で紹介している。
一行は、町教育委員会の蒲原文崇教育次長の案内で、津波到達時刻の午後3時37分で止まった時計、津波で教室ごと流され、天井や壁がはがれ落ちた様子など、当時の爪痕が残る校舎内を見て回った。蒲原教育次長は「避難訓練の積み重ねと教職員の正確な避難誘導が児童の命を救った」と当時を振り返り、日常的な防災意識の重要性を述べた。
山口代表は「震災の風化が進む中、3.11の記憶と教訓を後世に伝える遺構の役割はますます重要だ」と語った。