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コラム「北斗七星」
「未曽有」とは、いまだかつてないこと、非常に珍しいことという意味だ。本紙記者として平成の30年間を振り返ると、記事によく使った言葉としての印象が強い。とりわけ相次ぐ大規模自然災害に関する報道での頻度が高い◆1995年の阪神・淡路大震災は、戦後初めて震度7の揺れが大都市を襲った直下地震だった。2011年の東日本大震災は、マグニチュード9の巨大地震と大津波に見舞われた“千年に一度”の大災害だった。しかも原発事故まで重なった◆災害だけではない。大手銀行や証券会社の相次ぐ破綻による1998年の金融危機や2008年のリーマンショックは「未曽有の経済危機」と呼ばれた。日本が直面している人口減少と少子高齢化は、世界に類を見ない社会構造の変化である◆ここで強調したいのは、平成が暗い時代だったということではなく、いかなる難局にも屈せず克服しようとする日本の底力である。道半ばとはいえ東北復興は着実に進み、経済はデフレ脱却に向かっている。全世代型社会保障や働き方改革など少子高齢社会を乗り越える方策も平成のうちに手が打たれた◆昭和の高度経済成長は敗戦からの「未曽有の復興」と言われている。平成を経て、あすから「令和」が始まる。これまでに増して、力強く歩みを進めたい。(幸)