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温泉街にぎわい再び
廃業の旅館リニューアル
神奈川・湯河原町
名湯・湯河原温泉で知られる神奈川県湯河原町は、観光庁や官民ファンド「地域経済活性化支援機構」(REVIC)、地元金融機関などと連携し、廃業となった旅館の再生や、町営「万葉公園」の大規模改修、周辺の景観整備を進めている。町は温泉街全体のリニューアルを通じて、にぎわい創出をめざしたい考えだ。
名湯・湯河原温泉で知られる神奈川県湯河原町は、観光庁や官民ファンド「地域経済活性化支援機構」(REVIC)、地元金融機関などと連携し、廃業となった旅館の再生や、町営「万葉公園」の大規模改修、周辺の景観整備を進めている。町は温泉街全体のリニューアルを通じて、にぎわい創出をめざしたい考えだ。
湯河原温泉は国木田独歩や夏目漱石、芥川龍之介ら日本を代表する多くの文筆家が、執筆や保養で訪れた場所。現存する日本最古の歌集である「万葉集」の中では、東日本の温泉で唯一、湯河原温泉のことが詠まれており、古くから名湯として知られている。
その一方で、今では家業として経営する旅館の事業承継や、施設の老朽化対策などが課題に。そこで町が宿泊施設を核とした観光地再生に向けて動き出した。
町は2017年3月、観光庁やREVIC、地元金融機関などと協力する枠組みを発足。資金を確保した上で、旅館の再生などを手掛ける不動産会社などが、事業継続が困難な旅館を買い取ったり、長期賃借契約を結んだりして、建物をリノベーション(改修)する。再建後の運営は民間事業者が担い、旅館の再生をめざす。
■公園や日帰り施設、観光スポットを再整備
町の官民と連携した温泉街の再生事業により、これまで明治時代初期からの象徴的旅館「富士屋旅館」の改修(19年)をはじめ、敷地面積約1万9500平方メートルの万葉公園内にある日帰り温泉施設などの再整備(21年)も実現。昨年10月には、10の不思議な夢をつづった夏目漱石の短編集「夢十夜」をモチーフに、コロナ禍で倒産した旅館をリニューアルした。館内の至る所に3500冊を超える本を並べ、時間を忘れて夢心地に浸れる空間を提供する。
今年4月には、旧亀屋旅館を一新させ、湯河原の自然豊かな環境を堪能できる旅館がオープンする予定で、訪日外国人やテレワークの人ら新たな客層にも対応できるようにする。
町観光課の宮下睦史課長は「万葉公園などの観光ルートが再整備されたことで、宿泊客が出歩く姿を見かけるようになった。引き続き、湯河原の魅力発信に努める」と意気込む。
公明党の善本真人町議は13年3月定例会で、観光客の減少をきっかけに旅館が廃業し、従業員が勤務先を求めて町外へ流出していると指摘し、観光産業に適合する企業の誘致が必要だと訴えるなど一貫して推進してきた。