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【主張】民生委員の欠員深刻 地域福祉の担い手確保に知恵絞れ
民生委員のなり手不足が深刻だ。地域福祉を支えるため、人材確保に知恵を絞る必要がある。
厚生労働省の発表によると、民生委員は昨年11月30日に3年間の任期が終了し、同年12月1日に全国一斉に改選されたが、定数24万547人に対し、委嘱されたのは22万5356人にとどまった。
定数より1万5191人もの欠員は戦後最多とみられ、2010年と比べ約3倍に増加している。
主な背景には、定年退職後も働く人や共働きの増加により、なり手の中心だったシニア世代や専業主婦への委嘱が難しくなったことがある。
民生委員は非常勤の公務員で、市町村推薦会の推薦を経て厚労相から委嘱される。子どもを見守る児童委員を兼務し、交通費など活動費は支給されるが報酬はない。
民生委員の主な活動は、担当地域の高齢者や障がい者、ひとり親などを訪問し、相談を受け、行政などの関係機関と連携して必要な支援に結び付けることだ。地域住民にとって身近な相談役と言えよう。
特に近年は、一人暮らしの高齢者や生活困窮世帯の増加、児童虐待の深刻化などで民生委員の重要性は増している。政府は欠員の増加に歯止めをかけなければならない。
まずは国民への周知と理解に努めてほしい。全国民生委員児童委員連合会による昨年3月の調査では、64.0%が民生委員の名称を知っていたが、役割や活動内容まで知っていたのは、わずか5.4%だった。
幅広い層に参加を呼び掛けることも大切だ。地元学生に民生委員の活動を体験してもらう神戸市の取り組みは参考になろう。また、民生委員の活動を補佐する「協力員」を置いている自治体もある。
こうした取り組みのほか、働きながら活動できる環境の整備なども政府は検討してはどうか。創設から100年以上続く民生委員制度の成果を踏まえた上で、将来を見据えた議論を求めたい。