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コラム「北斗七星」
刑事役なら「熱血刑事にベテラン刑事、人情派知性派、行動派窓際派、ヤクザよりヤバいマル暴、捜査会議で報告するだけの刑事、出てきてすぐ殉死する刑事(中略)、それわたし全部やってます」と名脇役の俳優、松重豊氏は自著『空洞のなかみ』で語る◆人気ドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)で彼が演じる輸入雑貨商、井之頭五郎は出向いた各地の食堂などで独り、食事を楽しむ。例えばうまいカニを食べて、「ん~っ脳が、カニみそになりそうだ」と心の中でうなる。その表情とせりふは絶品◆年頭からのNHK大河ドラマ『どうする家康』では、徳川家康を支える古参の家臣、石川数正役。出陣のとき馬上から「今でござ~る!」と陣営を鼓舞する姿はド迫力◆松重氏に限らず名脇役たちは多彩な役柄を見事にこなす。ふと自分を振り返ると、ご近所さんと笑顔を交わし、親の面倒を見る友を励ましたり。時に、息子を亡くした同窓生と一緒に泣いたかと思えば、物書きの先輩と政治談議。また、遠方の友を訪ね旧交を温めることも◆役者ではないが、相手によっていろんな“顔”で交流している読者も多いのでは。今年も春に向かって、友好を広げる新たな役柄に挑むのも楽しそう。(三)