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2023年1月14日

<寄稿>パンデミックを防ぐ

繰り返す脅威へ対策急務

感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)最高経営責任者 リチャード・ハチェット

地球規模の感染症に対するワクチン開発を促進する官民連携組織「感染症流行対策イノベーション連合」(CEPI、本部=ノルウェー・オスロ)のリチャード・ハチェット最高経営責任者(CEO)が、新型コロナウイルスなどの感染症対策や、5月に広島で開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向けた期待をつづった本紙への寄稿を紹介します。

■3億ドル資金提供、日本政府、公明の支援に感謝

新型コロナウイルス発生から約3年たつが、未曽有のパンデミック(世界的流行)による膨大な犠牲者は世界で増え続けている。私たちは恐らく二度とパンデミック前のように戻れないというのが、コロナ禍でつらい年月を生き抜いた人々の本音だろう。私たちは、新型コロナがもたらした容赦ない被害に疲弊し、パンデミック疲れに襲われている。

パンデミックによる人命的・経済的な被害と損失に向き合い続けると同時に、欧州の戦争脅威、エネルギー費用の高騰、不安定な政治と経済、食糧不足など、注意が必要な他の危機にも見舞われている。

CEPIでは、世界中でこのような危機が山積していることを強く意識している。パンデミックの脅威に対し、世界は油断してはならないとも確信している。感染症の流行は常にあり、繰り返されるからである。天然痘、エボラ出血熱、インフルエンザ、その他のウイルス性病原体の形で、人類のパンデミック防御の弱点を突こうと潜んでいるのだ。

近年、感染症流行やパンデミックに対処する新基準を確立している日本には、尊敬の念に堪えない。新型コロナに対する日本の対応は、その一例だ。G7の中で人口が多く、平均年齢が高い国の一つであるにもかかわらず、新型コロナの感染による死亡率が最少なのは、強い統率力と国民の国に対する信頼によると察している。

来日中、公明党の山口那津男代表(左)と会談したハチェット氏。政府に3億ドルの拠出を要請して支援を後押しした公明党に謝意を表明した=2022年10月19日 衆院第2議員会館

昨年10月に日本を訪問した際、日本政府と公明党による国内外における新興感染症の脅威への取り組みと、世界をリードする日本の生物医学産業や科学機関の特徴である意欲とイノベーションに強い印象を受けた。

CEPIの創設メンバーとしてパンデミック対策に取り組み続ける日本、そして公明党からの支援に心から感謝を申し上げたい。昨年3月にCEPIが開催した「世界パンデミック対策サミット」で日本は再び誓約を更新し、5カ年パンデミック対策計画支援に、これまでの最高額となる3億ドルの資金提供を宣言した。この支援により、将来のパンデミックの脅威に対する防御を構築するための重要な準備作業を進めることが可能となる。

ワクチン開発加速今こそ サミットへ国際保健、大胆にリードを

■流行阻止で“先手”

私たちは皆、新型コロナの流行が終わってほしいと願っているが、その脅威はまだ存在している。新型コロナワクチンが記録的なスピードで開発されたにもかかわらず、人類は常にウイルスから一歩遅れているようで、新たな感染の波が起こるたびに新しい変異体を追い掛けている。明確に言えるのは、世界はより速く、より賢く対応する必要があるということだ。ウイルスとその亜種が発生する前に先手を打つことが理想である。

そのためには、新型コロナだけでなく、他のコロナウイルスも長期的に制御できる、高度な手段の開発に科学的創意を注ぎ続ける必要がある。今こそ、新しいウイルスや新しい亜種を予測し、先手を打って最終的にこのパンデミックを終わらせることができるようなイノベーションの開発に力を入れるべきだ。

CEPIでは、新型コロナや幅広いコロナウイルス亜種の脅威から身を守るワクチンの開発を支援している。これまでにNECを含む、広範囲に予防可能な汎コロナウイルスワクチンを開発する13のプロジェクトに資金提供してきた。

耐変異型および汎コロナウイルスワクチンの開発だけでなく、将来のあらゆるパンデミックの脅威に世界が先手を打つために必要な、より広範で不可欠な作業の多くも開拓している。G20(20カ国・地域)諸国や、日本が今年、議長国を務めるG7各国と共に、新興ウイルスに対する新しいワクチンの開発をさらに加速し、致命的なパンデミックを発生前に阻止できるよう支援する野心的な「100日ミッション」に着手している。

日本が同ミッションをG7国際保健課題の重要な柱としていることに非常に感謝しており、私はG7国際保健タスクフォースのアドバイザーとして、この課題に貢献できることを光栄に思う。疫病やパンデミックを過去のものにするという共通の目標に向かって、日本の研究機関との関係を強化することを楽しみにしている。

新興・再興感染症の流行がさらに拡大し、まん延の速度も増していることからも分かるように、疫病やパンデミック危機の新時代に突入していることは間違いない。政治指導者は、さまざまな危機に対応しているが、今はパンデミック脅威の優先順位を下げる時ではない。私たちは、感染症が健康や経済、さらには国家の安全保障を損なう可能性があることを認識し、計画、準備、投資する必要がある。

日本政府には、G7広島サミットに向けてこの緊急性を捉え、今後起こり得るパンデミックが新型コロナのように全世界を襲うのを阻止するために、大胆にリードしていただきたい。

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