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現役世代の負担を抑制
75歳以上、医療保険料見直しの方針
24年度から 6割は対象外、激変緩和も
出産一時金の財源にも活用
佐藤英道党厚労部会長に聞く
75歳以上が加入する後期高齢者医療制度を巡って政府は、一定の所得がある人の保険料を2024年度から引き上げることとし、通常国会に関連法案を提出する方針を示しています。見直しの内容や公明党の取り組みについて、党厚生労働部会長の佐藤英道衆院議員に答えてもらいました。
Q 見直しの理由は。
佐藤 少子高齢化に対応し、後期高齢者の負担能力に十分配慮しながら、現役世代の負担増を抑えるためです。後期高齢者医療制度の財源は、患者負担を除いて約5割を公費、約4割を現役世代からの支援金、約1割を後期高齢者の保険料で賄っています。保険料は2年ごとに改定されてきましたが、現役世代1人当たりの支援金は、制度創設時(08年度)の月2980円から現在は5000円を超え、1.7倍の水準に達しています。25年度には団塊の世代が全て75歳以上となり、一層の負担増が懸念されることから、今回の見直しに至りました。
Q 見直しの内容は。
佐藤 保険料のうち、まず、所得に関係なく支払う「均等割額」は、今回の見直しによる負担増はありません。その上で、年収約1000万円を超える高所得層(75歳以上の1%程度)が対象の賦課限度額(保険料の年間上限額)を現行の66万円から80万円に引き上げ、一定の所得(年収153万円以上)がある人が支払う「所得割額」も所得に応じて引き上げます。
見直しの対象は75歳以上の約4割で、残り6割の人は対象外です。ただし、この見直しとは別に、高齢化などによる医療費増に伴う保険料の増加(年収80万円で月70円、同200万円で月390円など)があります。
今回の見直しで生まれた財源は、全世代で社会保障制度を支え合う観点から、公明党が強力に推進した出産育児一時金の増額にも活用されます。
Q 対象者への配慮は。また、具体的に保険料はどうなるのか。
佐藤 昨年12月に公明党が岸田文雄首相に対し、急激な負担増を抑えるよう提言した結果、政府は激変緩和策の実施を決めました。
一部に住民税非課税世帯が含まれる年収153万~211万円の場合、制度改正による負担増は24年度には行わず、25年度に実施します。また、賦課限度額は24年度に73万円、25年度に80万円と段階的に引き上げます。出産育児一時金に対する後期高齢者からの支援額は、24、25年度は2分の1とし、全体としての負担額を抑えます。
厚労省によると、見直しに伴う1人当たりの月額保険料の増加額は、25年度時点で▽年収200万円は330円▽同400万円は1170円――などとなる見込みです。
介護は協議を継続、生活保護は減額なし
Q 介護保険や生活保護でも見直しが議論されていたが。
佐藤 公明党の提言を受け、介護保険料引き上げなどの見直しについて厚労省は、影響を慎重に検討する必要があるとして引き続き協議する方針を決めました。生活保護については、食費や光熱費などに充てる「生活扶助」の基準額見直しを巡って、19年のデータを使った検証結果では減額となる世帯がありましたが、コロナ禍や物価高などを踏まえて23、24年度は引き下げを見送ります。