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展望2023 少子化対策の転換
産み育てられる安心必要
切れ目ない伴走型支援構築せよ
放送大学名誉教授 宮本みち子氏
少子化に歯止めがかからないのは、これまでの少子化対策が十分ではなかった結果だと認識する必要がある。若い世代が子どもを産み育てることに背を向けるのは、子どもを持つことが過酷な負担と感じられているからである。特に女性は子どもを持つことで失うものがあまりにも多い。
これからの日本を担い、未来をつくっていくのは子どもたちであり、子どもの存在は社会の存続に欠かすことができない。少子化対策は人への投資としても重要である。出産・育児・教育を親の自己責任とする社会体制を抜本的に転換し、子どもや親たちを社会が支え、社会が子どもを育てるというスタンスに転じる必要がある。
核家族化が進み、親戚も少なくなっている中で、妊娠・出産・育児は孤独で負担の大きい仕事になっている。安心して子どもを産み育てることができるように、切れ目なくすべての妊婦・子ども・子育て家庭を支援する伴走型相談支援体制を作る必要がある。子ども家庭センターを各地に設置し、子育てサポートプランを、子どもの状態や家庭の事情に合わせて策定し、官民協働で支援することが必要だ。
家庭訪問による家事・育児支援を全国で展開する必要がある。すでに長年実施してきたある民間団体によれば、養育困難な事情を抱えて子どもの虐待やそのリスクがある家庭へ、家事・育児支援を継続した結果、虐待された子どもの心の回復に大きな効果を発揮し、母子ともに最悪の状態に陥らずに済んだという。外からの支援の手を必要としている孤立した親子は少なくない。虐待による後遺症は、子ども自身はもちろんのこと、社会的にもダメージが大きい。これ以上増やさない取り組みが必要だ。
コロナ禍で出生率の低下は加速化している。若年層の経済事情の悪化に加え、将来への悲観的展望が結婚も出産もためらわせている。子どもを産み育てる費用の大きさ、そして女性がキャリアを犠牲にせざるを得ない現実を見れば、当然のことである。若年層が家庭を持ち安心して妊娠出産できるためには、出産費用の給付、仕事と所得の保障、住宅給付、乳幼児の保育料の無償化などを早急に進める必要がある。
日本はGDPに占める家族関係社会支出(児童手当、児童扶養手当、出産手当金、育児休業給付など)の比率が、改善されつつあるとはいえ、西欧先進国に比べて低い。これでは日本の少子化に歯止めをかけるのは絶望的である。
公明党は2022年に「子育て応援トータルプラン」を発表した。出産育児一時金の増額、中長期的な出産・育児支援策を打ち出し、子ども・若者のライフステージに合わせた切れ目のない支援の充実を提案している。そのためには、国・地方双方で少なくとも6兆円を超える財源が必要だと数字を示している。このプランが実現することを期待する。