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2023年1月1日

危機乗り越え希望の時代に

新春対談 ~歴史に学ぶ~ 
公明党代表 山口那津男 × 作家 安部龍太郎

あけましておめでとうございます。今回の新春対談は、長編『家康』を執筆中の作家・安部龍太郎氏と公明党の山口那津男代表です。今年のNHK大河ドラマの題材にもなっている徳川家康などを通して、現代の危機を乗り越えるための処方箋について語り合いました。

■太平の世を築く理想を掲げ、苦難に耐え抜いた徳川家康

山口 今なお新型コロナウイルスやウクライナ危機に世界中が苦しんでいます。2023年は、苦難から光明を見いだし、明るい安定した時代へと開いていく年にしていかなければなりません。

そうした観点から、戦乱の世をくぐり抜けて太平の世の礎を築いた家康に学ぶことは多いのではないでしょうか。

安部 私は家康の長編小説を執筆していますが、動機は二つあります。一つは家康の人物像です。彼は旗印に「厭離穢土欣求浄土(穢れた国土を厭い離れ、極楽浄土を願い求める)」と掲げましたが、これは「戦乱の現世を浄土に変えてみせる」という政治スローガンだったのではないか――と解釈して、彼の生涯を追ってみたいのです。

もう一つは、戦国時代を世界史的な視点で捉えるべきだと考えており、それを描くには、主要な合戦に主役級で参加し続けた家康が主人公として最適だからです。

山口 これまでの学校教育で日本史は、世界史と切り離されて内向きにしか教えられてこなかった傾向がありますね。

安部 戦国時代、16世紀半ばごろからポルトガルが石見銀山(島根県)の銀を狙って鉄砲を売り込み、キリスト教の宣教師を仲介役とした南蛮貿易が始まりました。これを機に産業構造が変化し、農業を国家運営の基礎とする「農本主義・地方分権」的な体制から、外国との貿易によって国富を増大させ、財源や権限を一元化する「重商主義・中央集権」へと転換していきます。

山口 そうした時代の流れに乗って台頭してきたのが織田信長や豊臣秀吉ですね。一方で家康は苦難に翻弄された半生のように見えます。

安部 信長は「直線的」、秀吉は「多角的」であるのに対して家康は「らせん的」。同じ所を回っているようで、少しずつ上昇しているような生き方だったのではないでしょうか。

家康は幼少期から人質生活を送り、いつ首を切られるか分からない青年時代を過ごしました。その後も信長の命令で妻と長男を殺さざるを得なくなるような困難に直面しましたが、耐え抜くことができた背景には「平和な時代をつくりたい」という高い理想や使命感があったからだと思います。

山口 私も、青春時代を過ごした茨城県立水戸第一高校の校是「至誠一貫(誠意を貫き通すこと)」「堅忍力行(困難を強い意志で耐え、努力して実行すること)」が励みになっています。

安部 前途が見えない時代こそ、自分自身を支える信念が重要ですね。

■江戸期にもあった地方創生。党を挙げて新たな活性化へ

山口 信長の政治路線を受け継いだ秀吉は天下統一を果たしますが、大量の人員や費用を投入した朝鮮出兵の失敗で日本社会を疲弊させてしまいます。

安部 朝鮮出兵が秀吉の死によって1598年に終結した後に日本をどのように立て直していくべきか、諸大名は選択を迫られました。1600年の関ケ原の戦いは、信長・秀吉が進めた重商主義・中央集権を選ぶか、家康の農本主義・地方分権を選ぶかという争いでもありました。

山口 興味深い視点です。

安部 重商主義は効率的に経済を発展させますが、欲望の制御が難しく、エゴイズムの社会に陥る弊害があります。農本主義を採用した江戸時代は、地方分権的な統治や商業の抑制などで貧富の差が広がり過ぎないようにしました。身分の固定化も、家の生業を守ることができるようにするという側面があったと思います。こうした取り組みによって江戸時代は、およそ250年にわたり戦乱がほとんどない時代となりました。

山口 その上で江戸時代は、地域の特性を生かした特産物の生産が各地で推奨されました。静岡ではお茶、和歌山ではミカンなど、今も名産品として愛されています。これは現代の地方創生に当たるといえます。

安部 日本は世界的に見ても農業の宝庫です。各地の強みを生かして地方でも食べていける社会になれば、過疎化や社会保障などの課題解決に貢献できるのではないでしょうか。

■公明は平和主義と庶民主義の貫徹を

山口 現代日本は新自由主義経済が強調され過ぎた結果、都市部に人やモノが集中し、地方との格差が広がっています。この格差を是正するには、国の画一的なやり方ではなく、地方の自発的な力を大事にするべきです。ただし、地方の取り組みだけでも限界があるので、国と地方のネットワークが重要になります。公明党は地方議会から出発した現場主義の政党です。今春には統一地方選があります。地方に注目が集まる年だからこそ、党の全国津々浦々のネットワークの力を生かして各地域の発展に貢献したいと思います。

安部 公明党には、ぜひ地方の再生と、それを担う人材を育てる教育に力を入れてほしい。そして、持ち味である平和主義と庶民主義を貫徹してほしいと願っています。

山口 はい。地方がそれぞれの魅力を生かして栄えていく、希望の時代をつくるために頑張ります。

あべ・りゅうたろう

1955年、福岡県生まれ。国立久留米工業高等専門学校卒業。図書館司書として働きながら小説を執筆。90年に『血の日本史』で作家デビュー。2013年に『等伯』で直木賞受賞。15年から長編『家康』の連載を開始。近著に作家の佐藤優氏との共著『対決!日本史』1~3(潮出版社)。

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