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安保3文書 閣議決定
■対立と協調が絡み合う時代、複雑で厳しい環境に対処
政府は16日午後の臨時閣議で、安全保障関連3文書の改定を決定した。対立と協調の様相が複雑に絡み合う時代にあって、北朝鮮の相次ぐミサイル発射など日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中、国民の生命と生活を守るための防衛力の整備に万全を期す。同日午前に首相官邸で開かれた政府・与党政策懇談会で岸田文雄首相は「わが国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増す中、防衛力の抜本的強化を図る必要がある」と強調した。
抑止力強化へ「反撃能力」保有/憲法の範囲内、必要最小限
改定された文書は①日本の安全保障の最上位政策文書となる「国家安全保障戦略」②防衛の目標を設定し、それを達成するための手段と方法を示す「国家防衛戦略」③保有すべき防衛力の水準を達成するための中長期的な整備計画となる「防衛力整備計画」——の三つ。国家安保戦略は、2013年に安倍政権が初めて策定して以来、9年ぶりの改定となる。3文書改定に向けて自民、公明の与党両党は、実務者によるワーキングチームを中心に議論を重ねてきた。
3文書改定では、北朝鮮のミサイル技術の高度化で迎撃や探知が困難になる中、敵側の攻撃をためらわせる「抑止力」を向上させるため、敵のミサイル基地などを攻撃する「反撃能力」の保有を盛り込んだ。日米が協力して対処する。
反撃能力については、公明党の主張を受け、日本への武力攻撃が発生した際、攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置とした。また「憲法や国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の三要件を満たして初めて行使され、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されない」と記した。
このほか、防衛力整備では、サイバー攻撃を未然に防ぐための体制整備なども記述した。
27年度までの5年間の防衛費の総額は43兆円に増額。27年度に必要な防衛費約9兆円の確保に向けては、歳出改革の徹底や決算剰余金の活用などを行った上で、1兆円強を法人税、復興特別所得税、たばこ税で賄う。
日本周辺の地域情勢の認識では、中国について、日本の平和や国際秩序を確保する上で「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と表現。北朝鮮は「重大かつ差し迫った脅威」とした。
一方、国際社会での危機を未然に防ぎ、自由で開かれた国際秩序を強化する取り組みとして、周辺国・地域との外交や、人的交流の促進などを進めていく方針を示した。
岸田首相は16日夕の記者会見で、反撃能力の保有に関して「日本国憲法、国際法の範囲内での対応だ」と説明。防衛力整備に必要な安定財源の確保では「将来世代に先送りすることなく、今に生きるわれわれが対応すべきだ」と述べた。