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補聴器補助、18歳以上にも
片耳難聴者などに朗報
来年度から高知県、高知市で
18歳以上にも補聴器の購入費補助を―。高知県では現在、各市町村と連携して身体障害者手帳の交付対象とならない18歳未満の軽度、中等度の難聴者や片耳難聴者に対する補聴器の購入費助成を行っているが、来年度から18歳以上にも対象を拡大する。一人の母親の願いを受けて、公明党が県議会と高知市議会で連携して制度拡充を訴え、実現する見通しとなった。
補聴器補助の対象拡大を喜ぶ(左から)黒岩県議、和田さん、寺内市議
高知市内在住の和田あかねさんの長男、健裕さん(20)は先天性の小耳症外耳道閉鎖症で、穴がふさがった右耳が聴こえなかった。昨年、電気関係の点検整備作業を高所で行う仕事に就いたが、通信用のインカムを左耳に装着すると、他は何も聴こえなくなってしまう。「一人前の社会人として働けるようになりたい」との思いから、軟骨伝導補聴器を試すと、よく聴こえるようになったという。
この補聴器は、耳の軟骨部に振動で音を伝える仕組みで、従来品より体への負担も少ない。しかし、約30万円と高額の上、5年ごとの買い換えが必要。18歳未満なら補助を受けられるが、18歳以上は全額自己負担となる。
母親の願い、公明が推進
「息子の人生にとって、補聴器はなくてはならないものになっている。何とか補助を受けられるようにならないか」。昨年秋に、知人を通じて和田さんからこうした要望を受けたのが、公明党の黒岩正好県議と寺内憲資市議だった。
黒岩県議は今年2月定例会で、「18歳以降も補聴器は必要だが、経済的負担で二の足を踏む状況にある。対象を拡充するべきだ」と主張。これに対し県は「現行制度は、早期からの補聴器使用による難聴児支援が目的」としながらも、「高額補聴器の5年ごとの更新は、かなりの経済的な負担がある」との認識を示し、制度の拡充に向けて検討を進める方針を示した。
また、これを踏まえて高知市議会の9月定例会では、寺内市議が「県と足並みを合わせて18歳以上への支援制度導入を」と求め、市側から県の見直しに合わせていく考えが示された。
県障害福祉課によると、2011年にスタートした18歳未満に対する現行制度の利用は、県内の合計で約100件。助成額は、県と市が3分の1ずつを負担しているが、18歳以上も対象とする場合について、西野美香課長は「何回までの助成を可能とするかなど必要な要綱改定を行い、来年度実施に向けて準備を進める。県レベルで18歳以上を対象とするのは全国でも珍しいのではないか」と話している。
制度拡充の見通しがついたことについて、和田さんは「こんなに早く要望を形にしてくれるとは。本当にうれしい。同じように困っている人はいると思うので、制度拡充が多くの自治体に広まればいい」と、喜びを語っていた。