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重度障がい者の「働きたい」熱意に応える
就労中のヘルパー利用に公費
大阪・豊中市
重度障がい者の就労機会を拡大し、本人や家族の日常生活を充実させようと、大阪府豊中市は、厚生労働省が創設した市町村任意事業「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」を9月から導入した。通勤や就労中の障害福祉サービスによるヘルパー派遣の利用料を公費で負担するもの。国の制度創設を推進してきた公明党の山本香苗参院議員と、同市への導入を後押しした今村正市議はこのほど、当事者と実現を喜び合った。
週10時間以上の労働が対象
西村さん(中)の部屋で普段の仕事の様子を聞く山本(香)氏(右)、今村市議
同特別事業の対象者は、豊中市で重度訪問介護などの障害福祉サービスを受給しており、週に10時間以上働いている人。民間企業に雇用されている人や自営業者も対象に含まれる。本来なら全額自己負担となる通勤や就労中のヘルパー派遣が原則自己負担1割で利用でき、所得に応じて負担月額の上限も設定。生活保護受給者と市民税非課税世帯は無料。事業にかかる補助割合は国が2分の1、府が4分の1、市が4分の1。
豊中市に住む西村泉さん(41)は、筋力が徐々に低下する進行性の難病「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を患う。自力で体を動かすことは難しく、常にヘルパーの助けが必要だ。それでも「できる限り自分の力で働きたい」と願う西村さんは、ネットでつながる分身ロボットを使い、自宅から遠隔操作で、株式会社オリィ研究所が経営する東京都内のカフェで接客している。西村さんは「働くことで社会とつながる喜びを感じられる」と語り、週に3、4日、働いている。
嘆願書きっかけに公明が実現後押し
就労中も寝返りや、たんの吸引でヘルパーの介助は必要だ。西村さんは2021年9月、ヘルパー派遣の自己負担が軽減される同特別事業を豊中市でも導入するよう求める嘆願書を全市議に郵送で届けた。
迅速に反応したのが市議会公明党(酒井哲也幹事長)だった。西村さんの生活状況を確認した上で、山本参院議員と連携しつつ、21年12月定例会で今村市議が「重度障がい者が働きやすい環境を整備すべきだ」と訴え、同特別事業の導入を提案。市側は前向きに検討すると明言していた。
公明、対策を加速
厚労相から答弁
そもそも重度障がい者への就労支援を巡っては、山本参院議員が19年5月30日の参院厚生労働委員会で「厚労省内に労働や福祉などの関係部局の連携体制を整備すべきだ」と力説。
根本匠厚労相(当時)から「できるだけ速やかに体制を整えたい」との答弁を引き出し、同省内に対策を検討する障害者雇用・福祉連携強化プロジェクトチームを発足させた。その後、同チームでの検討の結果、20年10月、事業が創設された。
懇談の席上、「制度を利用できるようになり、とてもありがたい」と喜ぶ西村さん。山本参院議員は笑顔で応じ、「重い障がいがあっても働くことができ、安定した収入が得られる社会を実現したい」と誓った。