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再拡大続く 新型コロナ
飛沫避ける行動が重要
気温低下で感染持続か
湿度40%下回ると広がりやすく
琉球大学大学院医学研究科 山本和子教授に聞く
新型コロナウイルスの感染が全国で再拡大し「第8波」への懸念が高まっている状況を受け、感染リスクを下げるための方法やワクチン接種の重要性などについて、琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科)の山本和子教授に聞いた。
――最近の感染拡大をどう見ているか。
山本和子教授 北海道など寒冷地から急拡大したことを考えると、気温と湿度が関係するのではないか。気温が下がると感染持続期間が延び、湿度が40%以上を保てなくなると感染が一気に広がるといわれている。寒さで換気がおろそかになりがちなのも一因だろう。ただ、国民の20%強が既に感染して免疫を獲得していると推定され、また高齢者のワクチン接種率も高いため、重症化しやすい人は減っているのではないか。
――どうすれば感染リスクを下げられるか。
山本 一番の方法は、飛沫を飛ばす人に近寄らないことだ。ワクチンを接種済みでも、50センチほどの近距離で感染者と長時間話せば感染は免れない。周囲に流行している状況では人混みを避け、体調が悪い人と接触しないことが重要だ。
マスクについては、飛沫の飛散防止に高い効果があるものの、社会活動を妨げている面がある。風邪症状があるときや病院にいるときは着用するべきだが、ほとんどの高齢者がワクチン接種済みであることを前提に、他の場面では外していく方向が、これから現実的ではないか。
60歳以上のワクチン接種 重症・死亡、5分の1に
――改めて、ワクチン接種の意義は。
山本 60歳以上で3回接種した人は、未接種の人と比べて重症化リスク(入院リスク)と死亡リスクがいずれも5分の1に減る。ワクチン接種イコール感染予防とは言えないが、肺炎に進展したり、亡くなったりするリスクを格段に減らせることは、ワクチンの最も重要な効果だ。
接種後、時間の経過とともに抗体価(ウイルスを抑える中和抗体の量)は下がるが、体の免疫細胞が記憶しており、その記憶細胞には数十年の寿命がある。健康な若い人の場合、接種や感染の経験があると、再びウイルスが体内に入ってきても、記憶細胞が増えて抗体ができる。一方、高齢者や免疫不全の患者は記憶細胞を作る力が弱いため、ワクチンを繰り返し打つことが望ましい。
――治療の現状は。
山本 入院して酸素投与が必要な患者への治療法はある程度確立している。抗ウイルス薬とステロイドに代表される免疫調節薬の組み合わせだ。新型コロナでは、感染症の領域における免疫調節薬の効果が初めて明らかになった。軽症者の治療についてはデータが不足しており、今後の進展が待たれる。
健康な若者は検査キットも
――発熱時の留意点は。
山本 インフルエンザの流行が懸念される時期であり、コロナ以外の疾患も考えられる。有症状者全員が病院に押し寄せると、本当に状態が悪い人への対処が遅れるかもしれないので、もともと健康な若者は検査キットで自己検査するのも一つの手だ。基礎疾患や高齢など重症化しやすい要素がある人はすぐ、かかりつけ医に連絡して検査を受けてもらいたい。
――医療の逼迫を防ぐには。
山本 第7波では、コロナの重症者が増えて医療が逼迫したのではなく、食事の介助などで手がかかる患者が入院し、本当の重症者が入院できないという問題が起きた。高齢者施設などでコロナ患者が発生しても、施設内である程度、薬の服用や注射ができる体制を整え、重症者を受け入れる病床を埋めないことが重要だ。
国内感染 週69万人、前週比10万人増
東京、北海道など
国内の新型コロナウイルス感染者は28日午前10時現在、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」乗船者を含めた累計で2450万3839人となった。1週間の新規感染者は69万8274人で、前週(59万3013人)から10万5261人増えた。
都道府県別の1週間の新規感染者では、東京が7万2719人で最も多く、北海道(5万6468人)、愛知(4万5744人)、神奈川(4万4529人)、埼玉(3万6619人)と続いた。
死者は累計4万9324人。1週間で952人増えた。