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【主張】COP27閉幕 温暖化被害へ基金創設を評価
エジプトで開かれた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が20日に閉幕した。地球温暖化で引き起こされる「損失と被害」に対応するため、途上国支援の基金創設で合意したことを評価したい。
豪雨による洪水で国土の3分の1が水没したパキスタンのように、途上国では温暖化が原因とみられる豪雨や熱波など異常気象の影響をまともに受け、被害が多発している。
こうした「損失と被害」への対応が、途上国の長年の要請を踏まえて今回、初めて正式議題となった。
支援を求める途上国と新たな経済的負担を警戒する先進国との間で意見の隔たりは大きく、交渉は難航したが、会期を延長し、先進国が歩み寄ることで合意にこぎ着けた。
基金の資金をどう確保するかなど詳細な制度設計は、来年のCOP28に持ち越された。各国が足並みをそろえて取り組めるよう、実効性ある枠組みづくりが急務だ。
自然災害の脅威を経験している日本の役割も重要である。政府は今回、アジア太平洋地域での災害リスク低減に向けた支援強化を表明した。災害大国として、資金面だけでなく防災・減災の技術提供でも存在感を示すべきだ。災害発生を予測する早期警戒システムなどは国際社会から高く評価されている。
また今回のCOP27は、産業革命前と比べた気温上昇の幅を1.5度に抑える「パリ協定」の達成に向け、各国の取り組み状況を確認する場と位置付けられていた。この点で具体的な進展が見られなかったのは残念だ。
各国が温暖化対策を現状より強化しなければ、今世紀末までの気温上昇は2.8度になると指摘されている。ロシアのウクライナ侵略に伴いエネルギーの供給が不安定になり、石炭の利用拡大など脱炭素化に逆行する動きも見られる。
COP28に向け、脱炭素化に向けた取り組みが加速できるかどうか。先進国をはじめ、各国の責任ある対応が問われている。