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コラム「北斗七星」
今年の参院選の後、青年の低投票率を巡る新聞記事に、「応援したくなるような『推せる政治家』がいればいいのに」という若者の声が載っていた。アイドルやスポーツ選手など、好きで熱心に応援する対象が「推し」だから、政治家にはそぐわないのではと感じていたが、「推し」の構造を知って認識を改めた◆心理学者の久保(川合)南海子さんは、『「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か』(集英社新書)で、単に好きというだけでなく、グッズ集めやSNSへの投稿など自分が能動的に行動してしまう対象が「推し」だと説明する◆「推し」の頑張る姿を見て自分も頑張れるなど、応援することで「推し」と自分の一体化が生じ、自分の心や行動も変わる。「推し」を推すことは、自分を外の世界とつなぐ働き掛けであり、自分と世界のつながりに意味を付けることだという◆政治活動を受け身ではなく自分から能動的に行うことは、「推し」を推すのに似ている。行動を通して自分と世界のつながりを意味付け、選んだ議員によって実際に法律や制度を変え、社会を変えていくこともできる◆問題は「推せる政治家」がいるかどうか。若者の声に応えられる議員が必要だ。(光)